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【堺市】「1世帯当たり購入量全国一」堺育ちのバナナ 全国へ(読売新聞)

「百年バナナ」地下室追熟 甘さとコク

 1世帯あたりのバナナ購入量が全国一の堺市で、創業100年のバナナ加工卸業者が、今では珍しい「地下 むろ 」で追熟させ、選び抜いた品を「最高級 百年バナナ」と名付け、全国区にする挑戦を始めた。小売りで1本600円台と値は張るが、担当者は「一般的なものより甘さが強くコクもある。『堺育ちのバナナ』を堺の新たな顔にしたい」と意気込んでいる。(北口節子)

 取り組みを始めたのは、堺市堺区材木町の「薮内産業」。南米エクアドルから輸入したバナナを熟成させるのは、同社の地下約3メートルにある八つの「地下室」で、それぞれが約8畳の広さ。中は常に12~13度に保たれている。

 硬く濃い緑色の仮死状態で同社に到着したバナナは、手作業で室に運び込まれ、その後、植物ホルモンの一種エチレンガスを投入すると、約5日間でほどよく熟成される。室に染み出る地下水による適度な湿度もバナナの「目覚め」を促して黄色に色づかせるという。

 社長の薮内寛之さん(79)は「手間暇がかかり、体力も必要な熟成方法。地下室を使う方法は、今ではすっかり目にしなくなった」と振り返る。

 同社は1924年、寛之さんの父・作次郎さんが、奉公先だった神戸市のバナナ卸会社から独立し、創業。バナナは海外からの害虫侵入を防ぐ植物防疫法の規定で、青く未成熟な状態で輸入しなければならず、追熟は国内で行っている。

 かつては、多くの加工業者が地下室を使って追熟していたが、1960年代のバナナの輸入自由化で需要が拡大すると、商社や大手業者は、地上の倉庫で温度をコントロールする加工方法に変わっていったという。

 それでも、昔ながらの地下室にこだわる薮内社長は、「お客さんから『孫がここのバナナしか食べない』といった声をもらうこともあり、喜んでもらえるのがうれしい」と語る。

 都道府県庁所在市と政令指定都市を対象とした、総務省の家計調査(2人以上の世帯)の2022~24年平均では、堺市はバナナ購入量で、京都市や神戸市を抑え、全国トップとなる2万4164グラムに上った。

 「バナナのまち」として紹介されることも増える中、同社が今年から、100年続いたバナナ加工を知ってもらおうと、実験的に売り出した「最高級 百年バナナ」。傷がなく色づきが良い、250グラム以上の良品ばかりとはいえ、取り扱う、和泉市葛の葉町のギフトフルーツ専門店「くだもの王国 アオイ農園」では、1本600円(税別)で販売していて決して安くはない。

 しかし、店頭に並べたところ次々と売れているといい、薮内社長は「堺市のふるさと納税返礼品に採用されるほどに育ってくれれば」と話している。

読売新聞

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