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【貝塚市】生活の足実証運行…オンデマンド交通・路線バス(読売新聞)

鉄道網 公共交通の中心に

 貝塚市は1月、山間部を行き来するオンデマンド交通や、鉄道主要駅と公共施設を結ぶ路線バスの実証運行を始めた。人口減少に対応し、市内を走る鉄道網を地域公共交通の中心に据えた町づくりを目指す試み。12月末まで行って、市民らの意見を参考に、オンデマンド交通のエリア拡大や路線バスのルートの見直しを検討する。(門間圭祐)

 オンデマンド交通は、山間部の東山地区と葛城地区で運行する。ドア開口部が広く、車椅子の利用者でも乗車できるタクシー車両を用いる。運賃は一律大人300円で、乗客の定員は4人(車椅子利用は2人)の乗り合い方式。水鉄タクシーが運行を担う。

 乗降ポイントを81か所用意し、利用者は、希望するポイントを電話やインターネットで予約して利用する。時刻表や決められた経路はなく、予約状況に応じてAIが最適なルートを決める。東山地区が毎日、葛城地区が平日のみで、午前9時~午後6時に運行する。

 路線バスはJR阪和線、南海本線、水間鉄道の主要駅と市立病院などを結び、水間鉄道が運行する。朝と夕方の時間帯はJR東貝塚駅前広場から水間鉄道の石才駅前(運賃は一律大人100円)、日中は東貝塚駅前広場から市立貝塚病院(同220円)までを走らせる。

 市内では海側を走る南海、JR、海側と山側を結ぶ水間鉄道の鉄道3路線や、主要駅と公共施設を結ぶ路線バスなどの交通網が整備されている。ただ、少子高齢化による利用者の低迷で、鉄道やバスの運行本数が減少する課題を抱えている。

 市は2022年度、公共交通の実情を把握するため、市民や企業を対象にアンケートを実施。利用者である市民からは「水間鉄道とJR阪和線が接続していない」「バスの便数が少ない」などの意見があった。一方の事業者からは、乗務員不足や燃料費の高騰など、経営上の課題を指摘する声が上がった。

 市は、車の運転が難しい高齢者ら交通弱者の増加が見込まれることも踏まえて、昨年6月に地域公共交通計画を策定。基本方針として、鉄道ネットワークを補完する路線バスのルートの見直しや、オンデマンド交通の活用など2次交通の整備を掲げた。

 実証運行の開始を控えた1月7日、住民や市議らが出席してお披露目式が開かれた。酒井了市長は「まずは実証運行で課題を洗い出し、事業者、市民、行政がそれぞれの立場で連携協力しながら、公共交通中心の街づくりをすすめたい」とあいさつ。住民らはタクシーや路線バスの車内を見学した。

 オンデマンド交通の対象地区で町会長を務める山本太郎さん(69)は「今までの路線バスは目的地まで遠回りすることも多かった。オンデマンド交通は自分の行きたい場所まで点と点を結んでくれて便利だ」と期待を込めた。

新しい交通体系 模索動き広がる

 人口減少やマイカーの普及などの影響で、路線バスや鉄道のローカル線は利用が慢性的に低迷。コロナ禍や運転手不足も追い打ちを掛け、各地で減便や路線廃止の検討を余儀なくされている。

 住民の「生活の足」の維持が喫緊の課題となる中、新しい交通体系を模索する動きが広がる。

 国土交通省の「2024年版交通政策白書」によると、22年度末現在、全国1412市区町村がコミュニティーバス、631市町村が乗り合いタクシーを導入。市町村やNPOなどが自家用車を使用した有償運送を実施する「自家用有償旅客運送」は、3126団体で実施されている。

読売新聞

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