田尻町農業委員会(〆野(しめの)仁美会長、71)では、コンパクトな町内で面として農地を維持するため、アンケート調査を実施。この結果を受け、町農業委員会では会長自ら取り組みの中心となり、農業振興と地域活性化の策を検討している。
関西国際空港が目の前に見える人口8700人の小さな町、田尻町。同町では2022年6月、地域計画策定に先駆けて「農地の利用意向に関するアンケート調査」を実施した。
同調査は、1筆ごとの農地の状況を詳細に確認し具体的な農業振興策の検討につなげることが目的。農業経営基盤強化促進法の改正で地域計画が法定化される以前から計画されており、市街化調整区域の全農地所有者を対象にアンケートを行った。未回答者には〆野会長を筆頭に農業委員が戸別訪問して回答を促すなど、回収率は86%に達した。
結果から、空港を除く町域の約25%を占める農地約54㌶で高齢化による担い手の不足などが課題として浮き彫りになった。具体的には農地所有者の約7割が70歳以上で、後継者が未定・不在との回答が約9割を占めた。また、おおむね5年後の農業経営の意向については、離農や継続不明を示す回答が約5割に及んだ。一方、「農業振興や活性化につながると思う取り組み」については、基盤整備を望む声が大きいこともわかった。
この内容を踏まえ、22年11月に規模拡大を希望する農家を対象に農業委員会と町でヒアリングを実施。町内の担い手が規模拡大をするだけでは町内すべての農地の活用は困難とわかり、早急に対策することになった。
町ではこの調査結果を基に、23年2月から24年2月にかけて農業委員に加え、土地改良区、水利組合の役員に参加を求め、集落座談会を2地区で各3回開催。すべての集落座談会に〆野会長も出席して検討を重ね、①多様な担い手の確保②営農基盤の強化③観光との連携――の三つを取り組みの方向性に掲げた。
特に基盤整備を進めるためには農家の協力が必要不可欠なことから、〆野会長自らも「町と一緒に取り組んでいこう」と参加している委員や役員らに声を掛け、今後検討を深めることになった。
24年5月からは「農空間づくり検討会」を立ち上げて意見交換を続けているが、基盤整備を見据えた検討会に移行したことで町外の入り作も含めすべての農業者に出席してもらうことになった。
今後は担い手対策や基盤整備事業の導入などに向けた協議会へ改組し、事業実施に向けて取り組むことを計画している。
観光との連携についても、イチゴ栽培を主とした観光農園事業への参入を計画する町外企業の誘致に成功、来年度中の開園に向けて進み出した。
〆野会長は「少しずつでも農業振興策が動き出してきたことで、農家の意識が良い方向に向いてくれると思う」と話す。
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