衆院選(27日投開票)で、大阪16区(堺市堺区、東区、北区)は日本維新の会、公明党、立憲民主党による三つどもえの激戦になっている。公明は「常勝関西」といわれる強固な地盤で当選10回を果たした前職、北側一雄元国土交通相の引退を受けて、参院議員からくら替えした女性候補を後継として擁立。ここに維新が初挑戦し、立民が漁夫の利を狙う。
頭下げる重鎮
「私の後継です。よく仕事しますので、どうぞよろしくお願いします」
北側氏は22日、JR堺市駅周辺で、公明新人の山本香苗氏(53)を伴い、飲食店や商店を一軒一軒、頭を下げて回った。
北側氏は党幹事長や副代表などを務めた重鎮。安倍晋三政権下で成立した安全保障関連法を巡る自民党との与党協議で公明側の責任者を務めるなど安保政策に明るく、党憲法調査会長として憲法改正議論をリードした。公明に加え、自民や維新の支持層にも食い込んでいた。
山本氏は参院議員を4期務めた実績を訴えている。高齢者の医療費窓口負担を原則3割に引き上げる維新公約を批判し、「命と暮らしを守る」を前面に打ち出す。ただ、北側氏が携わった安保や憲法に触れる場面は乏しく、自民支持層への広がりに課題を抱える。
維新と立民が競合
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)による終盤情勢調査では、維新新人の黒田征樹氏(44)と立民前職の森山浩行氏(53)が競り合い、山本氏が追う展開だ。
黒田氏は堺市議時代に市の財政改革を進め、医療や福祉、教育に投資した実績をアピールしている。さらに維新は情勢を踏まえ、公明だけでなく立民もにらんだ「二正面作戦」に出ている。
維新の母体である地域政党「大阪維新の会」の横山英幸幹事長(大阪市長)は20日、堺市内で演説し、自民の派閥パーティー収入不記載事件に関し「自公政権は私腹を肥やす30年だ」と訴えた。立民についても源流の旧民主党が政権を担ったことを踏まえ「(政治とカネの問題を)批判しているが自分たちも政権を担っていた。(現在は)大きな野党だ。何もできていない」と批判した。
森山氏は直近2回の衆院選で北側氏に敗れたものの比例代表で復活当選した。「北側氏が引退した今がチャンスだ」として、旧民主が政権交代を果たした平成21年以来の小選挙区での勝利を目指している。
森山氏は19日、南海堺東駅前で、2025年大阪・関西万博の予算の膨張を念頭に「利権としがらみで身動きが取れなくなっている。維新と公明が連携してやってきたことの大掃除をする」と訴えた。この日は立民の枝野幸男最高顧問も応援に入った。陣営幹部は「リベラル票を固めた上で反自公、反維新票を取り込みたい」と鼻息が荒い。(石橋明日佳)
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