百舌鳥・古市古墳群モデル
世界遺産の 百舌鳥 ・古市古墳群をモデルにした、堺市在住の作家・蓮見恭子さん(59)の新刊小説「はにわラソン」(双葉文庫)が好評だ。主人公の箱根駅伝出場校出身の市職員が、フルマラソンの大会を企画・運営する舞台裏や、同僚や市民との交流を通し成長する姿を描いた。蓮見さんは「自分が大会を企画するなら、どうやって古墳を派手にみせることができるかを考えた。一緒に楽しんでもらえたら」と話している。(北口節子)
蓮見さんは2010年、「女騎手」で横溝正史ミステリ大賞の優秀賞を受賞してデビュー。20年には、住吉大社(大阪市)の門前町で展開される人情物小説「たこ焼きの岸本」で、府内の書店員らが選ぶ「第8回 大阪ほんま本大賞」を受賞した。
新刊は、古墳群に囲まれ、ブドウ畑や古い町並みが広がる架空の市「土師市」が舞台だ。箱根駅伝出場校では、選手を裏側から支える主務(マネジャー)を務め、出版社勤務をへて社会人枠で市職員に転職した主人公が、「スポーツでまちづくり」を掲げる市長から市の魅力PRのためフルマラソン大会開催を任され、次々と起きる問題を乗り越えていくという内容だ。
作中には、羽曳野市の応神天皇陵や河内ワイン、藤井寺市の古室山古墳をほうふつとさせるスポットや、堺市の公式キャラクター「ハニワ部長」をイメージした人物も登場する。
構想のきっかけは約10年前。高校女子駅伝を題材にした作品の執筆中、登場人物の目標タイムやペースがイメージできず、「書くために走り出した」という。その後、フルマラソンにも取り組んでいた19年、百舌鳥・古市古墳群が府内初の世界遺産に登録された。
「百舌鳥・古市古墳群を回るように42・195キロを走れば面白い」。ご当地マラソンの運営者や古墳群の取材に取りかかった。
雨にぬれながら声をかけてくれるボランティアらの姿が頭をよぎり、走る側ではなく、裏方に光を当てたいと考えた。コロナ禍でマラソン大会が中止となるなど、取材がスムーズには進まない時期もあったが、「スポーツ小説、ご当地小説、お仕事小説。私自身のキャリアの集大成」という形に仕上がったという。
蓮見さんは「近くにありながら、あまり古墳に親しみがなかったが、実際に歩いてみて面白さに気付いた。どうやったら古墳を『エンタメ』にできるか一緒に考えてもらえたら」と語る。
文庫本416ページで840円(税抜き)。
20日午後6時からは、府立中之島図書館で、蓮見さんが古墳群の魅力や作品の過程などを語る講座(2500円。ナカノシマ大学のウェブサイトで受け付け)も開かれる。
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