心地よい風を受けながら、大阪府南東部から大阪・関西万博会場近くまで川沿いを自転車で走れる「大和川リバーサイドサイクルライン」。大手自転車部品会社の本社があり、関連産業も根付いている堺市が大阪府などと整備した。「サイクルシティ堺」を掲げる同市は、シンボルとなるルート完成を自転車のさらなる魅力発信や利用拡大につなげたいと意気込む。(共同通信=小笠原学)
大阪府柏原市役所付近から大阪市住之江区までの全長約25キロで、自転車で走ると2時間弱。歩行者用と分け、安全で平らな道を整えた。桜並木を楽しめたり、大きな自転車のオブジェが飾られている場所があったり。休憩できる公園も備えている。
「ママチャリ」で走っていた山口正吾さん(80)=同市=は「景色がきれいで気分がいい」と生き生きした表情。目的地まで少し遠回りになっても、この道を利用するという。
ルートを西へ向かってペダルをこいでいくと、大阪メトロ中央線コスモスクエア駅付近に着く。大阪・関西万博会場最寄りの夢洲駅までわずか1駅だ。ロードバイクに乗っていた60代男性は「ぜひ、この道を使って万博に行ってみたい」と話した。
堺市の自転車産業につながる歴史をさかのぼると古墳時代にその源を見いだせるという。世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」の築造のため、すきなど鉄の道具を作る職人が多く住み、鉄の加工技術が発達。その技術が戦国時代には火縄銃、江戸時代には刃物作りに生かされた。
明治期になると欧米から自転車が伝わって時間貸しが繁盛し、自転車部品の製造へと受け継がれた。
経済的で環境に優しく、健康増進に役立つ交通手段でもある自転車。同市は万博を契機に自転車や大和川リバーサイドサイクルラインの利用者が増えることを期待する。市サイクルシティ推進部の錦崇仁さんは「大きなシンボルとなるルートができたので、自転車の魅力をもっと発信していきたい」と話している。
サイクルシティ堺 堺市は自転車を活用した町づくりを推進している。2023年には、スポーツ庁から自転車を通じて、市民の健康増進や高齢者などの社会参加を図り、地場産業の振興などにつなげようとしている取り組みを表彰されている。2027年には堺区の大和川そばに、自転車利用者らの交流の場となるような拠点施設をオープンする予定。
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