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【泉大津市』新型コロナワクチンとは何か、改めて問う 大阪泉大津・南出賢一市長「政治の役割とは、市民の健康と命、安全と尊厳を守ること」(サンデー毎日)

◇コロナワクチンのリスクとベネフィットを市民に情報発信し続けた自治体の長 

 2021年、新型コロナワクチン接種開始直後から、そのリスクとベネフィットを市民に正確に伝えてきた首長がいる。大阪府泉大津市・南出賢一市長。「政治の役割は生活の安心感を育み、尊厳を大切にすること。空気に流されず、自分で判断できる環境を整えること。そして選択肢を多様にすること」。その政治信念に迫る。

――南出市長は、新型コロナワクチン接種が始まって間もない2021年夏の早い時点から、ワクチンのメリットやデメリットについて市民に伝えてきました。接種は強制ではなく個人の判断に委ねられるものであり、同調圧力があってはならない。そう訴えた、恐らく全国で唯一の市長でした。

南出賢一 人類に初めて投与される遺伝子製剤ワクチンだったので、中長期の体への影響はまだわからない。だから冷静に呼びかけることが大事だと考えました。ワクチンがまるでヒーローのように扱われている空気感を、はっきりいって異常だとも思いましたし。確かに、基礎疾患のある方や高齢者などは新型コロナウイルス感染症に罹患(りかん)すると重症化しやすい傾向にありましたが、若い方は軽症ですんでいた。そういった年代による差も理解されていませんでしたし、当初あるといっていた感染予防の効果が実はなく、重症化予防だと政府の発表も変わっていった。市長メッセージとして、ワクチンの接種クーポンにそういった情報を載せて、一人一人が接種するかしないかを判断してくださいと訴えました。

――それほど早い時期に判断できたのはなぜですか。

南出 新型コロナの流行が始まったばかりの20年3月の時点で、中国が国家として診療ガイドラインを出していたんです。コロナウイルスの特徴、罹患した時の症状、また検査方法や治療法も書かれていました。西洋医学だけではなく東洋医学も用いて、清肺排毒湯(せいはいはいどくとう)などの漢方を使うこと。また水素と酸素の両方が入った酸水素ガスを吸うことなど、多岐にわたる内容でした。しかし、そういった治療法の情報が日本では全然表に出てこないことに、違和感を抱いていたんです。

 ある日、首相官邸で私が記者会見する機会があり、当時の安倍首相の補佐官だった国会議員の方にこう話しました。「国内外の医師たちの情報ネットワークを見ると、漢方などいろんな治療薬があります。選択肢を増やしませんか。それが完全な治療薬ではないとしても、ある程度有用なら使わない手はないですよね。選択肢は多いほうが国民は豊かになれるし、安心できます」。そうしたら「岩盤規制がありますよ」と。つまりは、厚生労働省の上級官の天下り先は製薬会社が多く、薬の承認や規制に影響を与えている、ということです。当時の製薬会社は「特例承認」という異例のスピードでワクチンを世に出そうとしていましたし、治療薬も開発していましたからね。そういう状況下ではワクチンが承認されればヒーロー扱いされるだろうというのは、早くから予想できていたんです。

◇パフォーマンス政治の罪

――厚労省の公式なデータに基づいて、新型コロナワクチン接種による後遺症患者数や死亡者数も市民に提供していました。でも南出市長は「打つな」とは決して言いませんでしたね。

南出 その通りです。誰もが、選択の自由がありますから。ただ5歳から11歳の子どもの接種が始まったころには、「重篤な副反応の起きるデメリットのほうがメリットより高いと自分は思う」「極めて慎重に判断してください」という発信へと変わりました。泉大津市では子どものワクチン接種クーポンを配布せずに、希望する方が自分で市役所に取りに来るという形にした。ワンクッション置くことで、冷静に考えてもらう時間を作りたかったのです。

――それに対する市民の反応はどうでしたか。

南出 最初のうちは批判的な声も確かにありました。でも後遺症や死亡者数のデータがきちんとありますから、「事実はこうですよね」と、説明しました。そうしているうちに、市民の理解も少しずつ進んでいったんです。副反応がひどいとか、ワクチンにより突然死した人が周囲に出てきて、「市長の言う通りやった」と言っていただく機会が増えた。子どもの接種に関しては泉大津市は全国で一番低い数字ですし、高齢者の接種数も下がっていきました。

――国や大阪府からの圧力はありましたか。またその政策を取ったことによるデメリットは。

南出 直接的な圧力はそれほど感じませんでした。ただ、国からの交付金(令和4年度の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金)の算定式に、市民のワクチン接種率による交付額の加算が組み込まれていたので、接種率が低い自治体にとっては不利となる側面がありました。でも、そもそもそういう制度設計自体がおかしいですし、市民の健康と命を真摯(しんし)に考えた時に、そこに踊らされるべきではないと判断しました。

――他の地方自治体の首長の反応は、いかがでしたか。

南出 やはり子どもの接種が始まったころから、「南出市長が正しいと思う」「表立っては言えないけど、応援してます」「勉強させてほしいので、職員向けにオンラインで話してくれませんか」と言われることが増えました。今日は東京で全国市長会の総会がありまして、そこでも「私、実は2回目を打ったあとに死にかけて入院しました」とか、「元気だった20代の職員が接種の翌日に亡くなって」と私に言いに来てくれた方がいた。それでも、「自分ではやはり声は上げにくい」と言っていましたね。何を恐れているのか、私にはわかりませんけれど。ワクチンの健康被害の相談者などと向き合うと、本当に放っておけない事案だと感じます。何より市民の命と健康に関わる重大な問題は、パフォーマンスでやることではないんです。

◇理想の政治家像は上杉鷹山

――市政運営においては、議員や職員の理解も欠かせません。その点はうまくいったのでしょうか。

南出 やはり最初は、私の主張に対して違和感を持った人が多かったです。議員も、賛成は4分の1ほどにすぎませんでした。ただ、私のスタンスはいつも「一緒に勉強しよう」なんですね。講師を呼んで、一緒に学ぶ場を何度も設けて、そうやって情報を共有していったら、時間とともにみんな理解してくれて。やがて同じスタンスで挑むことができるようになったんです。それがすごくありがたかった。まだ世論はワクチン一色だったので、職員への市民の風当たりが強い時期もありましたが、みな何とか耐えてくれました。その勉強会の内容は市民にも公開してネット上のアーカイブに残したり、リーフレットを配ったりしました。

――自治体の長はもちろん、現場の医師もコロナワクチンについて勉強不足だった側面がありました。

南出 まさに、そこです。政治家も官僚も、市役所の職員も医師もみな勉強不足で何も知らないですし、状況が変わっても知識がアップデートされていかない。これがコロナ政策に関する根本的な問題だったと思います。政治家も「専門家が言っている」「分科会が言っている」と丸投げし、議論すら行われませんでした。

――本来であれば、コロナワクチンで健康被害を受ける人が多数出た時点で一度、立ち止まることはできたはずです。

南出 09年11年に、新型インフルエンザが流行(はや)ってやはりパニックになり、新しいワクチンが出たあと数人亡くなった時は、新聞など各メディアも一面で取り上げました。でもコロナワクチンは、政府も官僚もマスコミもストップをかけたり軌道修正せずに、誰もが責任をなすりつけ合った結果、過去最大の薬害被害を生んでしまったのです。

 令和5年度の新型コロナワクチンに対する健康被害給付の予算は当初、約3億6000万円でした。しかし年度末に補正予算が組まれて、約394億円と110倍にまで膨れ上がっている(85㌻グラフ)。この数字を見れば、小学生でもおかしいとわかりますよね。

――市長は、コロナワクチン後遺症への支援プロジェクトの取り組みもされていますね。

南出 新型コロナ罹患による後遺症、さらにワクチン後遺症に対して、体の改善プログラムを提供しています。月に1回、4時間のプログラムを行う中で体そのものを整えて、治す方向に持っていく。それを官民連携でもう4年間やっています。医療機関で診てもらえない、また標準治療をやって逆に症状が悪化したという方が市外からも相談に来るので、枠が空いていれば受け入れています。

――平時であれば、前例主義や全体主義がうまく機能することもあります。でも、感染症という社会的混乱の中では、政治家の真価そのものが問われたと言っていいと思います。南出市長の政治哲学はどのように育まれたのですか。

南出 学生時代はボクシングで日本一を目指していました。減量がきつくて、高校生の頃から栄養学を勉強して、料理をし、自分の体を管理していたんです。社会人になってニチロ(現マルハニチロ)という大手水産メーカーに入り、当時の牛の病気「BSE」や残留農薬など食に関する安全性、それに日本の食料自給率問題を目の当たりにしました。同時に未来を予測する視座を勉強する中で、これは非常にまずい事態だという危機感と使命感から、政治の道に入りました。

 政治家としての私の根幹が育まれたのは、松下政経塾第1期卒であり、東洋日本思想家でもある林英臣先生の教えです。東洋と西洋の思想哲学、歴史や文明サイクル、医療などすべてを統合した学問を体系的に学ばせていただきました。それから江戸時代に米沢藩を復興させた上杉鷹山も、政治家として理想の姿だと思っています。

◇栄養価の高い金芽米を市民に提供

――今、米不足が問題になっていますが、泉大津市は農業生産地の自治体と協定を結び、直接買い付けるサプライチェーン作りを以前からやっていましたね。今回も、それにより市民が米を購入できる機会を提供し、その点でも注目されました。

南出 主食を安定して供給するというのは生活安全保障であり、国家安全保障でもある。つまりは、国防です。「令和の米騒動」がやがて起きるだろうというのは、5年以上前から肌感覚で理解していました。米の栽培地に行くと、農家さんの平均年齢は70歳と高齢化している。それに、米を栽培してもお金にならないという制度設計にも問題がある。米ではなく飼料用作物を作れば補助金が出るという実質的な減反政策が続いています。中間に多くの業者が入る米の流通構造の複雑さにより農家さんの取り分が少なくなり、自立できない。

 東京の自給率はカロリーベースでほぼ0%、大阪は1%です。私たち都市部は高温障害などで米が取れなくなればパニックになるとわかっていました。だから北海道の旭川から沖縄の石垣島まで全国の9の自治体と連携協定を結んで、生産地からダイレクトにお米を調達する市独自のサプライチェーンを作ったという流れです。農村地帯と都市部の共存共生を考えました。泉大津市の仕組みだと中抜きがありませんから、農家さんの所得も上がっています。

――その米もオーガニックや減農薬のみで、特別な精米方法の「金芽米(きんめまい)」を供給している、と。

南出 はい。「金芽米」というのは和歌山市の東洋ライスさんという会社が持っている特殊な精米加工方法なんです。玄米の糠(ぬか)を削(そ)ぐ過程で、金芽と亜糊粉層(あこふんそう)という薄皮一枚だけを残す技術です。この金芽米には長所がたくさんあります。まずは無洗米で炊けるので調理が楽で、しかも環境に負荷をかけない。さらには白米より旨味(うまみ)があり、ビタミンB1やビタミンE、オリゴ糖や食物繊維が大体2倍から14倍残っています。まさに医食同源、食べながら健康になるという理にかなった米なんです。

◇安心安全の土台の上に人の尊厳がある

――「食の安全は市民の健康に直結する」と常々、南出市長は言っていますね。

南出 食も含めて安全安心という土台がまずあって、そのうえに一人一人の市民の健康や人としての尊厳があります。金芽米は学校給食にも使われていますし、「マタニティ応援プロジェクト」により、妊婦の方には出産前から出産時期まで、毎月10㌔の金芽米をプレゼントしています。その健康調査結果を今年1月、論文で発表しました。妊婦の方は4割ほどが肌荒れや便秘、胃の張りなどに悩まされますが、金芽米を食べることでこの症状が解消されることが多い。また生まれた赤ちゃんの平均体重も少し増えましたし、生後1カ月検診でも、体重の伸び率がいい。お母さん方と接すると、「市長、この子は金芽米ベビーですよ!」「全然、風邪を引かないんです」と言ってくれます。

――地域によって人口構成比率も違うので、健康福祉や子ども政策というのは本来、自治体が最も手腕を発揮できるところです。昨年12月に行われた3期目の泉大津市長選に圧勝したのも、そういった政策が支持されたということですね。当時、時の人であったNHK党の立花孝志氏が立候補、一騎打ちという形になりました。その時の選挙戦について改めて教えてください。

南出 結果からいうと、「立花さん、ありがとうございました」という感じです。彼の立候補により泉大津市が全国的に注目されましたし、市民に政治に関心を持ってもらういい機会になりました。選挙の時はいつもひたすら走り回って、街頭に出ては15〜30分ほど演説をします。親が子どもを連れてくるのはもちろん、逆に子どもが親を連れてきてくれたり、寒いにもかかわらずご高齢の方も足を運んでくれたり。そこで米政策や新型コロナ政策の背景に込めた自分の思いやビジョンについて話すと、みなさん真剣に耳を傾けてくださったのです。それによって泉大津市の将来について語る人がすごく増えましたし、市民の結束が強まったと感じました。

 私は常々、「一人の100歩より、100人の一歩」と言っているんです。泉大津市の哲学は官民連携、市民共創。つまり、みなさん全員を抱き込んでいくこと。そして安全安心と市民の幸福度向上を目指して市が価値を創造し、提供していくこと。さらにはこの激動社会において未来の指針となるモデルを創発し、実践する市でありたいとも考えています。そこに向けて職員も市民も一丸となれる素地が今、整いつつあると感じているんです。

――今後の市政にも注目しています。本日はありがとうございました。

サンデー毎日

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