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【泉大津市】「水と空気から軽油」大阪・泉大津市長の投稿が物議 実証主体企業は特許理由に説明避ける(産経新聞)

大阪府泉大津市の南出賢一市長が、人工的に石油に変わる合成燃料を生成する実証実験で水と空気から軽油ができたとX(旧ツイッター)に投稿し、物議を醸している。実証の主体となっている仙台市の企業は合成燃料ができる仕組みについて、特許出願中であることを理由に詳細な説明を避けた。同社は2023年に大阪市や大阪府と同様の実証実験を行っているが、行政側は実験の成果について把握していないという。

「泉大津市において、合成燃料製造装置の可動式と実演会を行いました。水と空気から光の力で、45分間で約20リットルの軽油ができました」(原文ママ)

南出市長が6日、こう投稿すると、Xの利用者からは20リットルの軽油を生成するには、「理論上、3LDKのマンション約340室分の空気が必要」などとの指摘が相次いだ。南出市長が公開した動画では、本来は無色透明の軽油が黄緑色で、ガソリンなどと区別するために着色されている市販品ではないかと疑う声も出ている。

「市販の軽油と混ざって着色」

泉大津市の実証で使用されている設備はコンテナ1台分の簡素な装置で、仮に軽油の精製に成功していれば、画期的な技術革新につながることは間違いない。市の成長戦略課によると、軽油を種油とし、空気中の二酸化炭素と水に特殊な光を当てると軽油が増量する化学反応が起こるという。市の担当者は「種油には市販の軽油を使用していて、着色がもともとあって、混ざっていると認識している」と説明した。

実証の中心となっているのは、サステイナブルエネルギー開発(仙台市青葉区)。同社は「軽油を種油とした実証運転で、炭化水素分が一定割合増加する現象を確認している」と主張。日本産業規格(JIS)や「揮発油等の品質の確保等に関する法律」に定める軽油の規格を満たしているという。ただ、これまでの成果などについては「検証中」と詳細な説明を避け、検証を依頼した研究者の所属や氏名も「特許出願で指導を受けている立場でもあり、機微情報の保全上、現段階で氏名を公表するのは控える」とした。

泉大津市は昨年、大阪府和泉市のティー・エヌ・プランと人工石油製造などの実証実験を行う包括連携協定を締結した。協定に基づき、ティー・エヌ・プランとサステイナブルエネルギー開発とともに実証実験を実施した。ティー・エヌ・プランは水と大気中の二酸化炭素から生成した合成燃料で発電する装置を研究・開発しているとして、2025年大阪・関西万博に発電システムを提供すると発表している。

過去の実証結果、行政把握せず

サステイナブルエネルギー開発は23年、京大の今中忠行名誉教授の理論に基づき、大阪市や大阪府、大阪商工会議所などの支援を受けて種油と二酸化炭素、水を反応させて合成燃料を生成する実証実験を実施している。行政側の支援窓口となった商工会議所の担当者は「実証実験を実施する場所を提供しただけで、成果の報告などは求めていない」と、実証の結果を把握していないことを明かした。

同社は「方法論の相違から研究方針を分け、現在は同教授との共同研究・技術的連携はしていない」としたが、泉大津市の実証では過去の実証と同じ装置を使用していることを認めた。過去の成果や今回の実証での変更点などについては、「現在出願準備中または審査請求中の複数特許に深く関係するため、具体的な技術内容の開示は差し控える」と回答した。

夢の燃料、大手でも1日160リットル

合成燃料は第二次世界大戦中のナチス・ドイツが石油資源の不足を補うために石炭を原料に人造石油の生産に乗り出し、研究開発が進められてきた。人類のエネルギー不足を解決する夢の燃料だが、生成にかかるコストが高く、現在も商用化できる水準には至っていない。

石油元売り最大手ENEOS(エネオス)は昨年9月、横浜市内の研究所に合成燃料の製造実証プラントを完成させた。1日あたりの生産量は160リットルで、大阪万博のシャトルバスの燃料として利用している。(高木克聡)

産経新聞

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