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岸和田城天守 CF難航…耐震補強後内部改修 認知不足で目標の1割弱(読売新聞)

岸和田城天守閣の改修費用の一部に充てるため、岸和田市が行っているクラウドファンディング(CF)による資金集めが難航している。昨年5月から2回実施しているが、寄付の合計額は目標の1割にも届いていない。市は「城の認知度を上げるのが目的で、寄付が集まらなくても事業は進める」としており、財政難の中で今後の行方が注目されている。(北口節子)

 岸和田城天守閣は1597年、豊臣秀吉の重臣の小出秀政が築城したとされる。1827年に落雷で焼失し、71年の廃藩置県により廃城となった。戦後の1954年、市民による寄付や旧城主の子孫からの要望もあり、鉄骨鉄筋コンクリート3層構造(高さ約22メートル)で再建され、市のシンボルとして親しまれてきた。

 ただ、2019年に行った耐震診断で、震度6強以上で倒壊や崩落の危険が高いことが判明。市は24年1月に耐震対策基本計画を策定し、後世に残すため改修を決めた。30年度完成を目指し、内部に耐震壁を設置して強度を高め、スロープやエレベーターを設けてバリアフリー化も進める。

 工事費は概算で約2億8000万円に上る。国庫補助金などを見込み、一部の資金をふるさと納税寄付やCFで集める。現在実施しているCFは、耐震補強後の天守閣の内部改修費(約1億円)に充て、岸和田城などの歴史や文化を映像やパネルで展示するという。

 ところが、昨年5月~9月に1000万円を目標に実施したCF第1弾で集まったのは、190万6000円。9月から今年3月までの予定だった第2弾も目標2500万円に対して1%程度という不振で、期間を半年間延長している。岸和田市民からの寄付が全体の約7割を占めているといい、市は「市外の人たちに、大阪に大阪城以外の天守閣があるのがあまり知られていない」と頭を抱える。

 天守閣の整備を目的とした資金集めは各地で行われており、多くの資金が集まった事例も少なくない。

 18年に兵庫県尼崎市で145年ぶりに「再建」された尼崎城は、家電量販店の創業者が約12億円の私財を投じて天守閣を建設して市に寄贈したものだ。市民からも「一口城主」「一枚瓦」などで計約2億円が集まり、23年には匿名の個人から1億円の寄付も寄せられた。

 名古屋市は、17年から名古屋城天守閣の木造復元のための寄付を呼びかけ、多くの資金が集まり、現在も続けられている。

 岸和田市は、CFでの1万円以上の寄付に御城印、10万円以上で城主証や芳名板への記名権を贈り、750万円以上には改修後の記念イベントへの招待などを企画している。ただ、いずれも改修後の特典で、かなり先になるということも影響しているとみられる。

 市は29年度までCFを続ける予定で、市観光課の担当者は「今後は企業版ふるさと納税の活用や、CFサイトや期間の見直しなどでインパクトある方法を考えたい」と巻き返しを誓っている。

読売新聞

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