2006年の開港以来、国内線限定だった神戸空港(神戸市)で悲願の国際チャーター便が解禁となった。西日本の国際拠点空港とされる関西国際空港を補完する位置付けは変わらない見通しだが、定期便就航を見据える神戸側の動きに関空の地元は神経をとがらせる。大阪(伊丹)空港を含む3空港の一体的運用を機能させ、2025年大阪・関西万博後の関西圏の発展につなげられるかが注目される。
反対表明後、一転
「神戸空港はここから成長する。力強い関西経済を構築していきたい」
18日午前、神戸空港第2ターミナルの開業記念式典で、関西エアポートの山谷佳之社長は笑顔でこう強調した。
式典は和やかな雰囲気に包まれたが、神戸と関空の両空港には因縁の歴史がある。
昭和40年代、伊丹空港の騒音問題を機に新空港建設候補地として神戸沖が浮上。ただ当時の神戸市長が反対を表明し、大阪・泉州沖に関空が建設されることに。その後、神戸市が方針を転換し、神戸空港が開港した経緯がある。
開港時は関空の需要が伸び悩み、官民でつくる関西3空港懇談会は関空の成長を優先させ、国際線を関空に限定した。2018年に関西エアが関空と伊丹を含む3空港の一体運用を担うことになり、3空港懇は22年に神戸での国際チャーター便の受け入れを決めた。
神戸については、30年の国際定期便の就航を目指す方針も決定。航空会社側でも、将来の定期便の就航や増便を視野に入れた動きがみられる。
「容認できない」
これに対し、関空お膝元の大阪府泉佐野市の担当者は「関空開港に伴う地元負担をしてきた中で、関空の成長を阻害するものは容認できない」と不満を隠さない。3月下旬に国際線旅客受け入れ能力を年間4千万人に拡大したばかりで、神戸とのすみ分けの必要性を強調する。
3空港懇で神戸空港は「神戸以西の需要を開拓する」と位置付けられたこともあり、姫路城や淡路島など兵庫県内の観光地のほか、近隣の中四国地方など新たな市場をターゲットとする考えだ。
神戸市の担当者も「関空利用者は京都や大阪などを訪れることが多い。日本を旅行するリピーターが増える中で新たな需要を獲得したい」とし、インバウンド(訪日客)の取り込みに期待を込める。

ただ、万博開催中は訪日客需要が見込めるとしても、為替の変動など外的要因に左右されやすい訪日客に依存するのはリスクがある。また神戸空港の滑走路は2500メートルの1本のみで、欧米など長距離を飛べる大型機には不向きだ。関西3空港の一体的な運用にあたっては、万博閉幕後も需要を掘り起こし、利用者を確保し続ける戦略が求められそうだ。
アクセス向上が課題
利用客の増加が見込まれる神戸空港は海上に位置し、神戸市中心部からのアクセスなどの点で課題がある。
空港と市中心部の三宮を結ぶ神戸新交通ポートライナーは、1編成(6両)で定員約300人。国際チャーター便就航前の時点で、すでに通勤客らで混雑し乗車率100%超の時間帯もある。久元喜造市長は10日の記者会見で「ポートライナーへの影響をいかに小さくするかが極めて重要な課題となる」と述べた。
市は混雑緩和のため、ポートライナーの増便やバス運行による輸送力強化を目指す。また、空港から市内の宿泊先への大型荷物輸送サービスを活用した「手ぶら観光」を打ち出し、身軽な移動を促す考えだ。
国際チャーター便の就航に際し、市の担当者は「運航会社の間でどれほどの需要があるかは未知数だった」と語るが、ふたを開けてみれば20社程度が名乗りを上げた。
久元氏はチャーター便を安全かつ確実に運航すると強調した上で「定期便のニーズも間違いなくある」と手応えをにじませる。今後、定期便就航に向けて空港機能の拡張などを検討する方針だ。
海外はハブ機能強化
関西3空港の一体的運用にあたっては、西日本の国際拠点空港とされる関西国際空港が中心的役割を果たす。欧米やアジアなど海外では、主要国際空港について、乗り継ぎをはじめ航空路線網の中心となる「ハブ空港」の機能を強化。日本国内では、1978年の開港当初から国際線を運用してきた成田空港が「グローバルハブ空港」と位置付けられている。
国土交通省によると、成田は国際線だけでなく格安航空会社(LCC)や貨物を含め「多様な需要」に応えるとし、羽田空港は、国内外からの首都圏での発着需要に対応する。
国は欧米の主要国際空港の発着能力などを踏まえ、成田と羽田で年間計約80万回の発着能力を、2020年代後半に約100万回に拡大する目標を掲げる。
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