大阪刑務所、西日本成人矯正医療センター、大阪保護観察所、大阪少年鑑別所、堺市保護司会連絡協議会、堺市更生保護女性会と連携協定を結んだ。いずれも堺市内に拠点を持つ。同日記者会見した堺市の永藤英機市長は「全国的に再犯率は高い状態が続いており、地域で支えながら防いでいきたい」と語った。
今回の連携協定は、2020年に改正された社会福祉法にもとづく。同法は「地域共生社会の実現」を掲げて、住民の複雑で複合化したニーズに対応するため、市町村が包括的な支援体制を築くことを求めている。守秘義務契約を結べば、必要な情報を関係者で共有できる。
再犯防止と更生支援をめぐっては、兵庫県尼崎市が今年1月に神戸保護観察所、尼崎市保護司会と協定を結んだ事例があるが、堺市のように矯正施設まで巻き込んで広範に連携する自治体は全国でも珍しい。
たとえば少年鑑別所は少年の非行について、心理学、医学、社会学など多面的に分析している。成人矯正医療センターは健康上の問題を抱えた受刑者を収容する施設で、症状や治療についての知見がある。これらの情報を必要な範囲で共有し、社会復帰のため的確かつ迅速な対応がとれるようにする。
具体的には、少年鑑別所の指針をもとに保護観察処分を受けた少年があった場合、その少年の情報をもとに保護司が定期的に面談し、市職員や民間の女性ボランティアである堺市更生保護女性会などが支援する。就職が必要になれば、ハローワークなどとの連携も検討する。
これまでも組織を超えた連携はあったが、「この人は信頼できるから」といった属人的な要素が大きかった。協定を結ぶことで共通のプラットフォームができるため、異動などで人が変わっても密接な連携を維持しやすいとみている。
連携協定には、なり手不足が深刻になっている保護司の負担を軽くする狙いもある。人材の高齢化が進んでいるうえ、大津市の保護司殺害事件をきっかけに安全面の懸念も高まっている。堺市は面談の場所として、夜間や土日を含めて公民館などの公共施設を提供する。
保護司の団体である堺市保護司会連絡協議会の森田総一会長は「保護司だけで(出所者など)対象者の就労から医療、福祉まですべてカバーするのは難しい。特徴的な分野の者が(そろって)一元的に対応できれば、対象者のメリットは非常に大きくなる」と語った。
安心・安全な社会を維持するうえで、再犯防止の重要性は高い。法務省の23年版の犯罪白書によると、刑務所入所者のうち再入所は57%にのぼる。再入所者で無職の割合は73%、住所不定は21%で、再犯には生活の困窮状態が深くかかわっている。
(高橋圭介)
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