堺市の高校生と中小企業がタッグを組み、14日に開かれ、今年で50回目を迎える市の一大イベント「市民オリンピック」で、開会式の聖火点灯に使うオリジナルのトーチを完成させた。世界遺産「 百舌鳥 ・古市古墳群」の前方後円墳などをモチーフにしたデザインで、関係者は「堺企業のものづくり技術を多くの人に見てほしい」と語る。(北口節子)
市民オリンピックは、健康増進や地域間の交流などを目的に1975年から始まった。毎年10月、市内94小学校区の代表選手たちが、ソフトボール、バレーボール、卓球、陸上、ゲートボール、グラウンドゴルフの6種目で競う。今年は約5000人が出場を予定しており、「堺まつり」、「農業祭」と合わせて、市民の間では「堺三大まつり」として定着している。
オリンピックと称するだけあって、開会式では「聖火」が登場し、聖火台にともされる。これまで使っていた市販のトーチが古くなったため、主催する市民オリンピック委員会が、第50回の記念大会に向けてトーチの新調を企画。建物やインテリアなどのデザインを学ぶ市立堺高建築インテリア創造科に協力を依頼した。
同科の2、3年生が、授業の一環で過去の五輪で使われたトーチのデザインなどを研究。古墳や市花ハナショウブ、伝統産業の刃物など、市ゆかりの事物を取り入れた八つのデザインを考案した。
同委と市内の中小企業約60社で構成する堺工業技術研究会が、実際に制作できるかなどを検証して1案に絞り込んだ。
同研究会が今年6月、制作に取りかかり、金属加工やアルミ板金など、必要な技術をもつ各事業者が協力した。トーチは金色のアルミ製で、先端に向かって前方後円墳の形のように広がり、逆さに持っても中に入れた発煙筒が脱落しない工夫が施されている。
アルミの絞り加工を担当した吉持製作所(堺市西区)の吉持憲社長は「厚さ2ミリのアルミをデザイン通りに広げることが難しく、何度も試行錯誤を重ねた。ものづくりに携わるみんなの意地の結晶だ」と振り返る。
堺高3年時にデザイン案策定に携わった松尾由菜さん(19)や、同研究会の中西正人会長らが9月下旬に永藤英機市長を訪ね、できあがったばかりのトーチを披露した。
松尾さんは「小さい頃から堺について学んできたことを思い出しながらデザインした。時間や苦労を重ね、高い技術で作っていただいた」と話し、中西会長は「研究会の力を総動員した。トーチの継ぎ目の溶接技術の美しさも見てもらい、末永く使ってほしい」と語った。
トーチは大会当日、聖火台への点火に使われた後、金岡公園体育館で展示される。
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