大阪府和泉市上町のガラス細工業「井阪硝子(ガラス)製作所」で、来年のえと「巳(み)」の作品が作られている。1921(大正10)年創業で、3代にわたり縁起物のえとのガラス細工を手がけてきた。
灯油ランプの火に風を送りながら、直径8ミリ、長さ40センチの色ガラスの棒を約700度で熱して溶かす。
「色ガラスだけだと、陶器のように見えてしまうので、透明なガラスの棒を合わせるんです」と話す代表者の井阪浩明さん(61)はコテを手に、軟らかくなったガラス棒をヘビの形に整えていく。
とぐろを巻くヘビの尾の先を、招き猫の前脚のように顔の隣に添えて、作品は出来上がり。金運などを呼び込む縁起物だ。
1877(明治10)年にガラス玉の製造技術が伝わり、和泉市の地場産業となった「いずみガラス」。今年10月、経済産業相から伝統的工芸品に指定された。
知名度を高めるため、その歴史や技法、製造器具の資料を集め、指定に向け奔走した職人らの一人が井阪さんだ。
井阪さんの工房は最盛期には50人ほどの職人がいたが、今は3人にまで激減。ガラス細工をつくる企業は他に2社を残すのみとなった。担い手は不足しているという。
井阪さんは「ヘビは怖いというイメージがありますが、かわいらしい表情に仕上げています。特に若い世代には、和泉市にこんな伝統工芸があるんだと関心を持ってもらえれば、うれしい」と話している。
えとの巳のガラス細工は4~8センチ程度で、価格帯は1650~4400円(税込み)。問い合わせは井阪硝子製作所(0725・41・0145)へ。
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