泉州ニュース

【堺市】揚げ物の廃油から航空燃料 生産設備が公開(NHKニュース)

串カツやから揚げで使った廃油などから作られる航空機の次世代燃料、「SAF」の生産設備が22日、大阪・堺市で報道陣に公開されました。
二酸化炭素の排出削減につながるとして、関西でも量産に向けた動きが活発になっています。

持続可能な航空燃料=SAFは、植物や使用済みの食用油などを原料とし、従来のジェット燃料より二酸化炭素の排出量を大幅に削減できる次世代の航空燃料とされています。
大阪・堺市にあるコスモエネルギーホールディングスの堺製油所では、来年度(2025年度)から廃油を原料としたSAFが量産される予定で、その生産設備が報道陣に公開されました。
すでに、串カツやから揚げなどで使った廃油のタンクへの貯蔵が始まっていて、年間で3万キロリットル、東京とロンドンの間を350回往復できる量を生産したいとしています。
SAFをめぐっては、政府も脱炭素社会の実現に向け、2030年の時点で、国内の航空会社が使う燃料の10%をSAFにする目標を掲げています。
関西では、ENEOSホールディングスも和歌山県有田市の「和歌山製造所」で、2027年以降、年間40万キロリットルに上るSAFの生産を予定していて、この分野の動きが活発になっています。
コスモ石油の高田岳志 次世代プロジェクト推進部長は、「年内に設備を完成させ、年明けから試運転を始めたい。まずは、安全に設備を立ち上げることが大事だと思うので、関係者とともにしっかり取り組みたい」と話していました。

【大阪 堺市は民間企業と協定】
来年度(2025年度)から「SAF」の生産が予定される大阪・堺市では、使用済みの食用油を回収する取り組みを始めることになりました。
堺市は、SAFの生産が市内で始まるのを前に、原料となる廃油の回収を始めることを決め、22日は、関係者が出席して取り組みにかんする協定の締結式を行いました。
具体的には、▽22日以降、市内の商業施設2か所に、家庭で出た廃油の回収ボックスを設けるほか、▽SAFへの理解を深めてもらうため、小学校で出前講座も行いたいとしています。
9割以上が捨てられているとされる家庭から出る廃油を回収することがねらいで、廃油はSAFの生産に使われる予定です。
堺市の永藤英機 市長は、「堺から先進的な取り組みが生まれることを大変うれしく思う。家庭で使用した油は捨てるのではなく、再利用できるということを市民に広く呼びかけていきたい」と話していました。

【大阪でも廃油確保の動き】
多くの飲食店が集まる“くいだおれの町”大阪でも、店で使われた廃油を回収し、SAFの原料などとして使おうという取り組みが始まっています。
全国の飲食店に酒の配達などを行っている会社では、今月(11月)から大阪でも事前に依頼を受けた店から廃油を回収し、一斗缶の場合、1個あたり100円を代金から割り引くサービスを行っています。
廃油は、大阪・堺市で稼働予定のSAFの生産拠点などに販売され、原料として使われるということで、二酸化炭素などの排出削減に貢献しようと、この取り組みを始めました。
この日は、酒の配達員が、大阪・中央区にあるたこ焼き居酒屋を訪れ、フライドポテトやから揚げなどで使った廃油が入った一斗缶を受け取り、油漏れを防ぐ専用の袋に入れて、持ち帰っていました。
この店では、毎月およそ65リットルの油を使っていて、酒の配達にあわせ、廃油を回収してもらっているということです。
蛸家せんば店の渡邊匡 店長は、「今まで、廃食油の回収業者に週に1回、回収してもらっていましたが、このサービスは、いつでも回収してくれるので、油を置いておく必要がなく、すごく助かっています」と話していました。
廃油の回収を始めた「カクヤスグループ」の担当者の五十川里子さんは、「今は、飲食店からの需要が高いですが、今後は、一般家庭からの回収にも力を入れていきたい」と話していました。
SAFの原料となる廃油の確保に向けては、大阪に本社がある回転ずしチェーン大手、「くら寿司」や「スシロー」の運営会社も、天ぷらなどの揚げ物を調理したあとの油を活用しようという取り組みを進めています。

【普及への課題は】
SAFの普及に向けては、課題があります。
量産の技術はすでに確立されていますが、製造コストが割高で、従来のジェット燃料の2倍から16倍とされています。
また、SAFの原料の1つとなる廃油の確保も簡単ではありません。
飲食店や食品工場から廃油を回収する業者などで作る業界団体によりますと、廃油の多くは、国内の家畜の飼料の原料などとして再利用されていますが、世界的に廃油の需要は高まっています。
2022年度の廃油の輸出量は11万トンに上り、6年前のおよそ2倍に増えているということです。
今後、SAF向けの需要の増加が見込まれる中、廃油の“争奪戦”による取引価格の上昇も懸念されています。
こうした状況を受けて、いま、注目を集めているのが家庭から出る廃油です。
9割以上が捨てられていると言われていて、自治体や企業がその確保に力を入れています。
関西では、▼和歌山県や▼京都府亀岡市、▼それに神戸市が、市役所に廃油の回収設備を設置するなど、取り組みが活発になっています。

NHKニュース

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