国道26号線沿いにある「お魚食堂 こたや」の横に新たなコンセプトの漁港食堂がオープンしました。「お魚食堂 こたや」といえば あふれんばかりの魚介類をのせた海鮮丼が有名ですが、こちらの食堂はまた違った趣(おもむき)の店。
大漁旗に囲まれた広々とした店内、いけすでのびのびと泳ぐ魚、その雰囲気はまるで旅先でふと立ち寄る“テーマパーク”のよう。
地元の新鮮な魚介類を “漁港の雰囲気ごと” 味わえるワクワクするスポットの登場です。
(取材日 2024年10月23日)
「泉州漁港食堂 きくのや」
11時にオープンを控えた「泉州漁港食堂 きくのや」。数カ月前から外観が完成していたからか、その存在が気になっていた方も多い様子。やはりお客さんが殺到していました。
あづまやのような待合場所が何気にありがたいですね。
陽光がふりそそぐ広々とした店内は、地元に居ながらにしてテーマパークのような非日常感を味わえる雰囲気。掲げられた大漁旗が気分を盛り上げてくれます。
ご利用の流れ
「泉州漁港食堂 きくのや」は、セルフサービス。
利用方法は以下の通りです。
① 食券機でチケットを買う。
② チケットを持って席で待つ。
③ モニターに番号が表示されたらカウンターに商品を取りに行く。
④ 食事をする。
⑤ お帰りの際は食器を返却口へ。
メニューは、「特選お造り盛り合わせ定食」2300円、「天ぷら定食」1600円、「漁師のまかない丼」(味噌汁付き)1400円、「まぐろ中トロ赤身2色丼」(味噌汁付き)1680円、など。*料金すべて税込
緑色のテープが貼られているメニューは現時点では提供がなく、随時提供していく予定だそうです。
今日は、「特選お造り盛り合わせ定食」を食べたいと思います。
近頃、お肉が重たく感じてしまい、食欲の秋であっても “質のいいものを少量” 食べたいお年頃になってきました。
ちなみにお札は1枚ずつ投入してください。まとめて入れると戻ってきてしまいます。
チケットを持って席で待っていると、次から次へと入店するお客さんの姿が。
あっという間に店内はいっぱいになりました。
玄米茶・お湯・冷水・氷はテイクフリー。お惣菜の販売もあるのでレンジも設置しています。
ほどなくして店内4カ所にある電光掲示板に番号が表示されました(女性の声でアナウンスも〇)。待ち時間は、ほんの数分(日によるかも?)。
料理はカウンターで受け渡しがおこなわれ、トレイをのせて運ぶためのカートも準備されています。ご年配の方やお子様連れにはうれしい配慮ですね。
席で待つ提供スタイルと違って、セルフサービスは料理が提供されるまでの“体験”も楽しい。店内には、ほかにも「季節限定メニュー」のお造りやお寿司、焼き魚・煮魚、惣菜などの販売もあり、ぶらりと品定めをしながら席に戻ります。
ネタがどれも新鮮でボリューミー
たっぷりのごはんと味噌汁、そして新鮮なお造りの盛り合わせに「こういうごはんが食べたかったんだよ」としみじみ。
お造りは、中トロ、サーモン、カンパチ、イカ、赤海老、ウニ、鳥貝、と豪華です。
ネタは、どれも大きめ。ぶりんぶりんのサーモンはとろける美味しさ。
中トロは、淡白でありながら脂のりもしっかり。うーん美味い!
そして、まったりとした味わいのカンパチの美味しさに驚きました。
濃く、甘さも感じられます。
ウニや赤海老も磯の香りから新鮮さが伝わります。
脇をかためる小鉢も上品です。
近頃 小食気味のわたしには、ごはんの量も多く、完食できるかどうか不安でしたが、あまりにもネタが新鮮で脂ものっていたため、ぺろりと平らげてしまいました。
異業種からの参戦 仕掛け人は”ただの魚好き”
「お魚食堂 こたや」の横にできたことから、すっかり同系列のお店とばかり思っていましたが、異業種からの参戦でした。きっかけは、マンガのような運命の出会いだった、といいます。
「泉州漁港食堂 きくのや」の運営会社「クリサンセマム株式会社」(本社 貝塚市)は、自動車などのワイヤーロープを製作する会社。
なぜ、ワイヤーロープの会社が漁港食堂を? というシンプルな質問を投げかけてみました。
「ぼくは、釣りのプロ(自称・弟子アリ)」と語る株式会社 菊乃家 代表取締役 社長 菊川 直紀(きくがわ なおき)さん。その答えに驚きました。
ある日、和歌山で釣りをしていたら船のエンジンがつぶれてしまい漂流してしまった。
知り合いの漁師が助けに来てくれた。
辿り着いた場所が泉佐野漁港だった。
コロナ禍にも関わらず「お魚食堂 こたや」が大盛況だった。
アレや! 俺にもできる! 漁港食堂をやろう!
以上。信じられます? この人”ただの魚好き”です。
設計士なし。コンサルなし。飲食人大学で寿司職人の技術を学び(スパルタ!)、夜な夜なあかりを灯して店舗オープンへ向けて準備を進めてきたといいます。試行錯誤して2年間もがき苦しんでオープンさせたお店です。
SNSやホームページも満足に開設できない中、この人がしたたかな商人であることがオープン日に証明されます。
6000人押し寄せる勢い
菊川さんは、自称“釣りのプロ”(釣り歴24年)というだけあって、その繋がりやこだわりはかなりのもの。ワイヤーロープのルーツが泉佐野にあったことから、ふつうは貸してくれないであろう漁港組合管轄の土地を借り、地元の漁港をはじめ、「佐野海産」「あき水産」などから鮮魚を仕入れ、神経締め(*)などを行い(主にタイやカンパチ)鮮度を保ち提供しています。
*神経締めをした魚は、従来の方法で締めた魚に比べて鮮度が長続きします。身がしまり、コリコリとした食感を楽しむことができます。
その目利きの力を知ってか知らぬか、オープン日はかなりの人が押し寄せました。
2時間で300食販売。その後も続く人の流れに「このままだと6000人押し寄せる勢いだ…」と従業員のカラダを心配し、急遽お店を閉める決断をします。
うれしい悲鳴ともとれる異例の出来事に「本当は夜の営業もしたかったけど当面の間は“売り切れ閉店”となりそうです」と菊川さん。
50人収容できる宴会スペースも準備したけれど、今は稼働できない。
今後は席数を110席に減らし、長いスパンでこの場所を温めていく、とのこと。
来春にはシーサイドエリアにバーベキューサイトもオープン予定。
漂流し辿り着いた運命の場所で展開される「菊川劇場」。新たなウェーブが、街を元気にしてくれそうです。
それにしても、なぜそれほどの人が集まったのでしょう。
ヒントは文中にあります。
数カ月前から外観を完成させ、夜な夜なあかりを灯して準備を…
そう、これが宣伝になっていたのです。
恐るべし “ただの魚好き”。
【基本情報】
店名:「泉州漁港食堂 きくのや」
住所:泉佐野市新浜町4-3(Googleマップ参照)
Tel:072-479-3661
営業時間:11:00~売り切れ次第終了
定休日:火曜
駐車場:あり
取材協力 株式会社 菊乃家 代表取締役 社長 菊川 直紀 様
*記事内容は取材当時のものです。
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