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【和泉市】<1・地方創生>国の様々な機能 分散を(読売新聞)

府市長会会長 辻宏康・和泉市長 65

 27日投開票の衆院選は、日本の針路を決める大切な選挙だ。党と候補者、そして私たち有権者は、この国が抱える課題にどう向き合い、1票を投じるべきなのか。各分野のリーダーや識者に意見を聞いた。

 ――市長会会長、地方自治体の首長として現状や、10年間の「地方創生」の取り組みをどうみるか。

 地方提案型事業への予算措置や、庁舎に防災機能を備えることで「緊急防災・減災事業債」の活用が可能となるなど、財政的支援は評価できる。ただ、社会の流れでは、東京一極集中が続いているのが現状だ。

 ――どのような政策を望むか。

 文化庁が昨年、京都に移転したが、例えば、大阪に観光庁や経済産業省を持ってくるなど、もっと大胆な政策転換を求めたい。災害対応としても、国の様々な機能を分散しないと、本当の地方創生は進まない。

 ――人口が減少する中、地方都市の間で子育て世代を奪い合うような競争が進んでいる。

 給食無償化や子どもの医療費助成の拡充など、自治体間のサービス合戦で、増えない人口を取り合っているのが現状だ。「人が資源」「人を育てる」という考えに立ち、子どもを産みやすい社会制度をナショナルミニマム(国による必要最低限の保障)として、国が率先して作ってほしい。

 ――「人材を育てる」取り組みを地方で実践している。

 和泉市では、今年度から職員の給与制度を大幅に改革した。初任給が全国最高額となって注目されたが、それ以外の昇格や評価制度、副業許可などの改革の方が大きい。「他の自治体や社会全体も変わってほしい」という思いで取り組んだ。地方や国の成長のため、地方から人材育成をしていく。そういう制度設計も期待したい。

 ――地方も国も人手不足との声もある。

 自治体から総務省に提案し、予算化される事業もあるが、国からも地方創生のために何をすればいいか、アイデアを出してほしい。職員を地方に出向させて、現状を把握してもらい、そこでつかんだものを持ち帰り、地方を活性化させるようなネットワークづくりにつなげてほしい。

 ――地方自治体として進めたいことは。

 都市部の中高年に地方への移住を促し、地域活性化を図る取り組みを国は進めている。だが、介護が必要な方を想定した特別養護老人ホームなどではなく、高齢者が快適に暮らすために必要な住まいや医療機関、商業施設、娯楽施設などが集約されたまちづくりを進めたい。高齢者だけでなく、いま住んでいる人も、違う世代の移住者も、心地よく過ごせるまちづくりのために使える国の補助メニューが増えればありがたい。

 ――そうした中で行われる衆院選に、どのような議論を求めるか。

 我々、地方自治体は市民に密着している。都市整備や環境問題ももちろん必要だが、地方自治体の大きな役割は子育て、教育、医療、福祉、防災だ。そういうところに目が行き届いた政策を論じてほしい。

(聞き手・北口節子)

 ◇つじ・ひろみち 和泉市出身。1996年に同市議になり、2009年に同市長に初当選して、現在4期目。23年5月から府市長会会長。

東西格差 大きく

 地方での人口減と高齢化が加速度的に進む中、全国で活力ある社会を維持することを目指して、2014年に当時の安倍政権が打ち出したのが「地方創生」だ。

 その実現のため、東京一極集中を是正する必要が掲げられた。しかし、10年がたった今も、東京の求心力に陰りは見られない。

 総務省が発表した住民基本台帳に基づく23年の人口移動報告によると、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)への転入者は転出者を上回る「転入超過」で計12万6515人。東京都だけで6万8285人に上った。

 大阪府も1万792人の転入超過となったが、大阪圏(大阪、兵庫、京都、奈良の2府2県)で見ると559人の「転出超過」で、東西の格差は大きい。

 省庁など政府機関が地方に移転すると、東京圏にある企業や団体もそれに同調し、雇用が地方へ分散する効果が期待される。15年に、42道府県が69機関の移転を国に提案した。

 しかし、京都市に文化庁が移った他は、消費者庁が徳島市に、総務省統計局が和歌山市にそれぞれ事務所を置いただけ。府が移転を求めた中小企業庁などは、「既存の出先機関の体制強化」にとどまっている。

読売新聞

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