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面積は大阪・藤井寺市より大きい たった一人いる住民って… 関空島の不思議を読み解く(産経新聞)

今月4日に平成6年の開港から30年を迎えたアジアのゲートウエー(玄関口)、関西国際空港。大阪泉州沖5キロに浮かぶ世界初の完全人工島からなる空港として誕生した関空は、さまざまな数字に彩られている。この30年で累計約5億4405万人(今年8月末)が利用してきた関空を「数字」から読み解いてみた。

1068ヘクタール

1期島、2期島という2つの完全人工島で構成される関西国際空港。その面積は合わせて約1068ヘクタール(連絡橋をのぞくと1055ヘクタール)で、大阪府藤井寺市(889ヘクタール)や大阪市北区(1034ヘクタール)より広い。

関空島は、泉佐野市、泉南市、田尻町と府内3市町にまたがる。そのうち田尻町は、総面積532ヘクタールのうち約6割に当たる327ヘクタールが関空島で構成されている。

ちなみに「総面積が最も小さく全国47位だった大阪府は、関空島が加わったことで46位の香川県を追い抜いた」といわれることがあるが、事情は少し複雑だ。

それには島が関係している。香川、岡山県境の瀬戸内海に浮かぶ直島町(香川県)だ。国土の面積をまとめている国土地理院は昭和63年、直島町を構成している島の一つが岡山県との間で境界が確定していないため、同町(約1420ヘクタール)をまるごと香川県の面積に含まない運用に変えた。そのため、大阪府は関空開港前にはすでに46位に浮上していたのだ。

平成26年からは、境界未定の区域があっても参考値として総面積に含めるようになった。だが、関空島が完成していた大阪府は、すでに香川県より広くなっていた。

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各自治体は、毎月末時点の住民基本台帳登録者数をまとめている。大阪府泉佐野市、泉南市、田尻町の3市町の関空島内の状況をみると、田尻町部分に1人だけ登録者がいる。つまり、関空島内に住民が1人いるのだ。

実は府警関西空港署の署長官舎があり、歴代署長が住民として暮らしているのだ。署の広報を担当する岩崎裕副署長は「府警では、署長が管内に居住することによって有事即応体制を確保している」と説明してくれた。緊急事態に対応するため、トップである署長が常に警察署の近くにいる体制を整えているわけだ。

関空は深夜早朝にも貨物便などの離着陸がある完全24時間運用で、常時、空港内の各所で働いている人たちがいる。もちろん警察署も24時間対応。約1万5千人が働いているとされる関空でたった1人の住民だが、島内で完全に1人になる時間帯はないようだ。

30万

空港にとって、年間発着回数は利用状況を示す数字で、いわば「通知表」だ。関空は「2030年代前半をめどに年間30万回の実現」という目標を掲げている。開港からの30年で、最高は新型コロナウイルス禍前の令和元年度の19万6022回。30万回はその1・5倍という野心的な目標で、日本の玄関口の成田空港に匹敵する数字だ。

だが、来年4月に開幕する2025年大阪・関西万博を契機に訪日外国人観光客(インバウンド)のさらなる増加が見込まれ、令和12(2030)年には30万回に迫る需要予測もある。

30万回達成に向け、来年春からは新しい飛行ルートが導入される。離陸後、淡路島上空を飛ぶルートが新たに設定され、上空での飛行機の混雑を解消。これで離着陸の処理能力が向上し、これまでの1時間当たり最大45回から60回に拡大される。

関西全体では、大阪(伊丹)空港、神戸空港と合わせて年間50万回発着を目指している。万博以降も順調に旅客を増やしていけるかがポイントになる。

6・9キロ

実は、関空は鉄道事業者でもある。列車を運行して旅客輸送はしていないが、線路を敷設して駅を整備し、別の事業者が列車を運行する「第三種鉄道事業者」だ。

その区間は、関空島対岸のりんくうタウン駅(泉佐野市)から約3・75キロの連絡橋を通り、関西空港駅までの6・9キロ。関西空港線の一部となっている。関空の運営会社である関西エアポートではなく、関空の設備や土地を所有する設置管理者の新関西国際空港会社が、国から事業の許可を得ている形だ。

その区間を走るのは、JR西日本と南海電鉄。JR西の特急「はるか」も南海の特急「ラピート」も開港当初から運行しており、関空とともに30年を迎えた。運行開始から今年7月までの累計で、はるかが6590万人、ラピートが6805万人の旅行者を運んだ。(藤谷茂樹)

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