雨の中、傘を差さずに泣き叫ぶ小学3年の女児(8)を救ったのは心優しい4人の男子中学生だった。「もうすぐお巡りさんが来るからね」。下校中、保護者の迎えが来ずにパニック状態になっていた女児に声をかけ続け、交番に申告。女児は、無事に家族と再会することができた。大阪府警は4人の思いやりと勇気ある行動に感謝状を贈った。
4人は大阪府和泉市立北池田中1年の大河原琥珀(おおかわはらこはく)さん(12)▽坂本大河さん(13)▽唐津悠生さん(12)▽岸本陽空(はる)さん(13)。
6月上旬の放課後、和泉市内の図書館に集まった4人が、近くの商業施設に移動しようとしたときだった。図書館を出ると、赤いランドセルを背負った女児が大声で泣きじゃくっている。「ただ事ではない」。そう思った4人は声をかけに近づいた。
「どうしたん?」「お母さんは?」。問いかけに対し女児は泣き続けるばかり。呼吸のペースが乱れた女児を前に、「質問攻めにしたらさらにパニックになるかも」と考え、安心してもらえるよう「大丈夫?」と背中をさすり続けた。
実はこの日は近畿地方の梅雨入りが発表された日。女児は歩道橋の下にいたものの、雨粒が強風にあおられ、肌寒さも感じた。4人は女児がぬれないよう傘を差し、見守り続けた。
10分ほどして落ち着きを取り戻した女児は「ママ来る」「白い車」と口にした。しばらく母親の迎えを一緒に待ったが、その姿は見当たらない。女児のランドセル内に連絡先が書かれた紙を見つけ、電話をかけるもつながらなかった。
「一秒でも早く伝えないと」。大河原さんが近くの交番に向かい、3人はその間、女の子を見守り続けた。「もうすぐお巡りさんが来るからね」と伝えると女児は安心した表情を見せた。
和泉署によると、女児はバス停で保護者の迎えを待っていたものの、保護者間で行き違いが生じ、1時間以上一人で待ち続けていたという。
警察官の到着後、保護者と連絡がつながり、迎えに来た祖母と母親を見た女児は一目散に抱きついた。その光景に4人は胸をなでおろした。
和泉署は今月2日、女児が犯罪や事故に巻き込まれるのを未然に防いだとして、感謝状を贈呈した。同署の岩崎裕署長は「困っている人がいたらまた助けてあげてください」と謝意とともに伝えた。4人は「女の子を救うことができてうれしかった」と話し、初めての感謝状に「良いことをしたら返ってくるんだ」と笑顔を見せた。(木下倫太朗)
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