堺の酒蔵 岸和田に蒸留所
世界を視野 28年以降出荷
堺市で唯一の酒蔵「 利休蔵 」が岸和田市内に蒸留所を開設し、ウイスキー製造に乗り出した。「泉州」の名を冠したウイスキーで海外展開を狙い、「世界中にファンを作りたい」と夢を膨らませている。(北口節子)
3月3日、真新しい銅釜のポットスチルや木おけ発酵槽などの設備を備えた「泉州蒸溜所」(岸和田市土生町)で、開所式が行われた。利休蔵社長の加藤堅さん(58)は「さらに飛躍するためにウイスキーは核となる事業。新たな創業の日となる」と宣言した。
加藤さんは上海出身。日本人の妻と知り合い、20歳代で来日した。堺市の整骨院で働き、はりや医療テープの製造販売会社を起業。その後、日本に帰化した。
約6年前、先代の社長から経営手腕を見込まれて利休蔵の立て直しを求められたが、「自分には畑違い」と迷ったという。ただ、「自分と会社を育ててくれた堺に恩返しをしたい」との強い思いから決意を固めた。社長就任後、金剛山系の水を使った清酒を中心に海外販売を強化。茶リキュールや酒かすを使った製品などの商品開発も手がけてきた。
国内の清酒消費量は縮小傾向にあり、利休蔵も販売量の約7割が国外だ。海外の顧客から「ジャパニーズウイスキーを造ってほしい」という要望が寄せられ、「利休蔵を100年先も残るようにするのが自分の使命」とウイスキー事業に新規参入した。
初挑戦となるウイスキー造りには、元サントリー主席ブレンダーで、サントリーマーケティング&コマース技術顧問の冨岡伸一さん(72)に協力を仰いだ。冨岡さんの提案で木おけにしたといい、冨岡さんは「木おけの方がステンレスより発酵が面白い。おけを使うことで、いろんな出会いが生まれる」と期待を込める。
蒸留所は2階建ての386平方メートル、年間製造量はシングルモルトで約2万リットル。小規模な蒸留所だが、加藤さんは「5年後には、広さも製造量も10倍にしたい」と語る。開所間もないため、貯蔵用の 樽 で熟成させた本格的な商品の出荷は2028年以降になり、1万円前後での発売を目指すという。
また、樽ごとの販売を受け付けたところ、ミズナラ材の樽8個が既に完売し、人気の高さをうかがわせた。
蒸留所から車で10分も走れば、世界一甘い桃としてギネス認定された「 包近 の桃」の産地があり、桃の木樽で熟成させる商品も計画中だ。加藤さんは「ものづくりで地域を盛り上げたい。大言壮語に聞こえるかもしれないが、いつかは、サントリーの『山崎』と並ぶ、世界的な蒸留所に成長したい」と意気込む。
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