泉州ニュース

南海電鉄、泉北高速鉄道「合併」で何が変わるのか 利用者は歓迎、約10億円の収入減はどうする?(東洋新聞オンライン)

大阪府の南部に広がる全国有数の大規模ニュータウン「泉北ニュータウン」。その動脈として走り続けてきたのが泉北高速鉄道だ。

南海電気鉄道の高野線に直通して大阪市中心部と結ぶ同鉄道は4月1日、親会社の南海が吸収合併。長らく親しまれた泉北高速鉄道の名に代わる新たな路線名は、南海の「泉北線」だ。

難波に直通するニュータウンの足

合併で沿線利用者らの注目を集めるのは「運賃の値下げ」。これまで別会社として運行してきた泉北と南海が一体となることで、初乗り運賃の2度払いを解消する。大人普通運賃で平均7%、通学定期(1カ月)は38.8%の大幅値下げとなる。

泉北高速鉄道は、南海高野線の中百舌鳥(堺市)から分岐して泉北ニュータウンを横断し、泉北地域のもう1つのニュータウンであるトリヴェール和泉の玄関口、和泉中央(和泉市)に至る全長14.3kmの路線。途中に深井、泉ケ丘、栂・美木多(とが・みきた)、光明池の4駅がある。

列車は泉北線内を折り返し運転する各駅停車のほか、南海高野線に乗り入れて難波に直通する区間急行と準急行、そして全席座席指定の特急「泉北ライナー」が走る。和泉中央―なんば間の所要時間は区間急行で三十数分。車両は青いラインが入った泉北高速の電車のほか、南海の電車も乗り入れる。

最初の区間として中百舌鳥―泉ケ丘間が開業したのは1971年4月。その後1973年12月に栂・美木多、1977年8月には光明池まで延伸し、1995年4月に和泉中央までの全線が開業した。

開業時から路線名は「泉北高速鉄道」として親しまれてきたが、かつての会社名は「大阪府都市開発」で、大阪府などが出資する第三セクターだった。

合併で何が変わる?

大阪府都市開発の株式を大阪府が南海に売却し、社名が泉北高速鉄道となったのは2014年。この際にも「値下げ」が話題になった。

2013年、大阪府都市開発の筆頭株主だった府は保有株の売却方針を決定。売却先の公募には南海も名乗りを上げ、泉北―南海間の乗り継ぎ運賃80円値下げを提案したものの、株式の買い取り額で上回ったアメリカの投資ファンド、ローンスターが優先交渉権を得た。

だが、同社の提案では値下げ額が10円と低かったことで沿線自治体や住民から反発の声が相次ぎ、府議会も同社への売却案を否決。その後、府は随意契約で南海への売却を決定し、2014年7月に南海の子会社となった。それから約10年を経て、完全に南海と一体化することになったわけだ。

合併によって路線名は南海の「泉北線」となり、駅のナンバーもこれまでの「SB01~SB06」から「NK88(深井)~NK92(和泉中央)」に変わるほか、泉北高速の車両に入っていた「SEMBOKU」のロゴは2024年12月以降「NANKAI」に変更されている。南海によると、車両のカラーリングについても「順次変更の予定」(広報担当者)という。

「運賃値下げ」を大々的にPR

だが、南海や泉北の電車内、そして駅に張り出された合併を告知するポスターなどで、なんといっても目立つのは「運賃値下げ」のPRだ。

3月19日から走り始めたラッピング電車も、南海がスポンサー契約を結ぶ泉北沿線出身のプロゴルファー、高木萌衣選手の写真や泉北高速鉄道のキャラクター・せんぼくんのイラストとともに「新!運賃」を強調。難波駅ホームのラッピングには「NEW泉北線 運賃が値下げ」「日本一運賃が高いって言わんとってな」といった文言も躍る。

実際には「日本一高い」わけではないが、泉北高速は運賃が高い路線というイメージで知られてきた。ただ、現状では運賃設定自体がとくに高いわけではない。例えば、泉ケ丘―深井間は1駅で大人220円だが、泉北高速は駅間の距離が比較的長く、同区間は1駅といっても4.1kmある。南海の運賃でも4~7kmは240円だ。

運賃が高額になるのは、泉北高速と南海を乗り継ぐ際、初乗り運賃を2度取られることが要因だ。合併によりこれが解消され、泉北線と南海線を乗り継ぐ際の運賃が下がる。

普通運賃(大人)は最大で150円の値下げとなる。例えば和泉中央―難波間(590円)や泉ケ丘―難波間(490円)のように変わらない区間も少なくないが、定期運賃は全区間で下がる。通勤定期(1カ月)は平均23.5%、通学定期(同)は38.8%の値下げだ。

利用者は歓迎、南海は減収

沿線利用者は当然ながら値下げを歓迎しているようだ。難波からの区間急行に乗っていた女性は「このご時世で値下げは助かる」。駅で泉北高速の電車にカメラを向けていた男性も、「(泉北高速の)名前が消えるのは寂しいが、メリットは大きいと思う」と語った。

値下げを決めた理由について南海は、「堺・泉北エリアはポテンシャルを秘めた重点エリアであり、関係人口増加や子育て世代の流入促進が期待できるなど、堺・泉北エリアのまちづくりという観点から取り組む意義は大きいと考えている」と説明する。

ただ、当然ながら値下げすれば運賃収入は減る。同社によると、短期的には年間で約10億円の減収が見込まれるという。

減収の対策として、南海は乗り継ぎ利用などの促進策に加え、「鉄道のシステムや機能の統合により、重複する投資やコストの削減、運営体制の見直しなどの事業効率化策を合わせて実施していく」といい、「中長期的に収益向上に努める」方針だ。値下げによる利用者増加の想定については「公表は差し控える」(南海)という。

値下げで利用拡大なるか

高額な運賃で知られた鉄道で、大幅値下げを実施した事例はすでにある。千葉ニュータウンを走る北総鉄道(千葉県)だ。同社は2022年10月、平均15.4%の値下げを実施。通学定期については64.7%引き下げた。

その結果、2022年10月~2023年9月の実績は、値下げ前の2019年度と比較して通学定期の輸送人員が約3割、普通乗車券の利用者も19.7%増えたという(2024年7月22日付記事『乗客増えた?北総線「運賃大幅値下げ」のその後』)。北総鉄道の場合は自社線内の運賃を引き下げているため、乗り継ぎ運賃を引き下げる泉北のケースと単純には比べられないが、値下げが利用拡大につながった例だ。

利用者にとっては歓迎であろう、合併による運賃値下げ。南海にとっては沿線の人口減少が進む中、値下げ効果でどの程度利用者を掘り起こせるかが今後の課題だ。泉北高速の吸収合併は沿線利用者や自治体、そして南海のそれぞれにとって「なんかいい」あるいは「とてもいい」結果となるか。

東洋新聞オンライン

関連記事

コメント

PAGE TOP