インバウンド(訪日外国人客)が急増している関西空港のお膝元・大阪府泉佐野市で、宿泊する外国人が増える一方、観光消費が低迷している。宿泊だけして他の観光地へ移動してしまう観光客が多いとみられる。市は、4月に開幕する大阪・関西万博を見据え、誘客のための店舗を整備するなど、観光客の引き留めに躍起になっている。(門間圭祐)
商店街まばら
7日朝、泉佐野市の南海泉佐野駅南側の泉佐野センターホテル前では、観光バスが次々と停車し、外国人観光客らを乗せて出発した。
一方、駅北側にある「つばさ通り商店街」は、人通りがまばらだった。同商店街などでつくる泉佐野商業会連合会副会長の野口博一さん(67)は「宿泊客は商店街にはなかなか立ち寄ってくれない」と嘆く。
[PR]関空では昨年、国際線の外国人旅客数が過去最高の約1892万人に上った。泉佐野市によると、1か月あたりの外国人延べ宿泊者数はコロナ禍の影響を受けた2021年1月には約5000人だったが、24年1月には3万人を超えた。早朝や深夜便の利用者が、出発前日や到着後に宿泊するケースが多いという。
市が最大1億円の奨励金制度を設けてホテルや旅館を誘致していることもあって、市内の宿泊施設は増加している。大阪府の資料を基にコロナ禍前の19年9月末と24年9月末を比較したところ、ホテル・旅館は7件増の39件、民泊は25件増の64件に上った。
「年末年始は休みがなく、旧正月の2月も中国からの宿泊客でいっぱいだった」。昨年2月に開業したゲストハウス「HOSTEL KURIYA OSAKA」(5室)の代表(40)は、忙しい日々を送る。宿泊者の約95%を外国人が占め、4月の万博開幕以降も約90件の予約が入っているという。
大阪、京都に移動
一方で、外国人観光客の消費額は少ない。
観光誘客に取り組む一般社団法人「泉佐野シティプロモーション推進協議会」の24年のアンケート調査では、市内滞在中の消費額は1人当たり約6万4000円(宿泊費を含む)。観光庁による24年のインバウンド消費動向調査の22万7000円(同)とは開きがある。市は、外国人観光客が市内で宿泊だけし、大阪や京都に移動してしまうのが原因とみている。
空き家活用
こうした状況を受け、市は外国人観光客の滞在時間を延ばし、消費を促す取り組みを進める。21年度から、市内の空き家や空き店舗の改修費を補助する制度をスタート。250万円を上限に改修費の3分の2まで補助する。この制度により、23年度までに南海泉佐野駅周辺を中心に計20軒が、カフェや居酒屋に生まれ変わった。
米国から訪れたゲーム販売店経営の男性(30)は2月下旬から、京都や奈良を観光するため泉佐野市に1週間宿泊し、食事は同駅周辺のラーメン店や焼き鳥店を使った。「観光地にも近く、朝も静かでぐっすりと寝ることができる」と満足げだ。
市は昨年12月、関空に一番近い温泉をうたう「犬鳴山温泉」や漁協の青空市場などの観光情報を集約した英語や中国語対応のサイトを開設。大阪・関西万博が開幕すれば外国人はさらに増えるとみて、5月には、つばさ通り商店街内にある古民家を改修し、和菓子作りや着物の着付け体験ができる「甘味茶房さのまち庵」もオープンさせる予定だ。
市まちの活性課の宮本真彰・地域振興担当参事は「体験型観光でリピーターを増やすなど、楽しんで市内を巡り、消費を促す取り組みを進めたい」と話す。
この記事へのトラックバックはありません。