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【泉佐野市】長野発ヤッホーブルーイング、泉佐野で体験型ブルワリー建設のなぜ(日経クロストレンド)

クラフトビール最大手のヤッホーブルーイングが、体験型ブルワリー「ヤッホーブルーイング大阪醸造所 よなよなビアライズ」の起工式を公開し、今後の戦略を明らかにした。大阪府泉佐野市のふるさと納税型クラウドファンディング「#ふるさと納税3.0」を活用するのが特徴。ブルワリーがどうにぎわいを生み、街づくりにつながっていくのか――。

「よなよなエール」などのクラフトビールを製造販売するヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)は、関西国際空港に程近い大阪府泉佐野市のりんくうタウンに関西初となる大規模な体験型ブルワリーを開業する。

 施設名は「ヤッホーブルーイング大阪醸造所 よなよなビアライズ」。泉佐野市独自の制度「#ふるさと納税3.0」を活用して建設費用を調達し、2026年夏の開業を目指す。

エンターテインメント性を兼ね備えたヤッホー初の集客型施設

 国内最大規模のふるさと納税型クラウドファンディング「#ふるさと納税3.0」を活用した同プロジェクトは、総事業費30億円以上を見込む大規模施設となる。

 「よなよなビアライズ」の計画地は、関西国際空港の対岸に広がるりんくうタウンの北側に位置する公園「りんくうアイスパーク」内。広い芝生広場にはりんくう野外文化音楽堂がある他、海沿いにはアイスアリーナや温泉施設、ドッグランも整備されており、近隣の住民が気軽に訪れる。

 8256.35m2の広い敷地に建つ施設の延べ床面積は2025.10m2。製造能力は年間約900kL計画している。

 同施設は、単なる醸造所ではなく、クラフトビールを軸としたエンターテインメント施設として設計。集客や観光を目的とした体験型施設である点が大きな特徴だ。

 そのため、本社がある長野県の2カ所の醸造所とは、建物の設計や内装が大きく異なる。「既存の醸造所は見学目的で建てられていないので非常に不便で動線もすごい無理がある。見える景色も殺風景。今回は見学ツアーを前提に最適なつくりになっているので、動線も視界も素晴らしい」と、ヤッホーブルーイングの井手直行社長は説明する。

 施設内では、ガラス越しの見学エリアで双方向の醸造所見学ツアーに参加でき、ビールの製造過程を間近で見学できる。より詳細な解説が受けられるガイド付き有料ツアーも用意。発酵タンクに近づける特別体験ゾーンも設置される予定だ。

 また、できたてのクラフトビールをその場で味わえる試飲スペースでは、特別醸造ビールの提供や、限定フレーバーの試飲体験を計画。自分でタップをひねってビールを注げるセルフサーブエリアやビールと好相性のフードペアリングを体験できる飲食エリアも設置する。

 施設内だけでなく、屋外のランドスケープにもエンターテインメントの要素が随所に盛り込まれる。

 醸造所の建物正面には、主力商品の「よなよなエール」のアイコニックなデザインが大きく描かれ、敷地内の中央にある展望スペースのフォトスポットからはグラスを持ってビールを飲んでいるかのような写真を撮影することもできる。

 緑に囲まれた空間で自然を感じながらビールを味わえるようランドスケープを設計しているのも魅力。ハーブガーデンに囲まれた席や芝生のスペース、ホップのカーテンに囲まれたテラス席、大きな木を囲むベンチ、子供も遊べるプレイエリアなどで自由に過ごせるように工夫されている。

 週末にはキッチンカーも登場予定。「隣接する場所にも食関係の事業者を誘致しているので、トータルで食のバラエティーを広げていきたい」(井手社長)としている。

 施設名の「よなよなビアライズ」は、よなよなエールのビールとサプライズを掛け合わせた言葉で、クラフトビールを通じてサプライズを届けたいという思いがあるという。

 クラフトビールの歴史や製造工程を学べるビール講座の他、定期的に開催してきたファン交流イベントなどエンターテインメント性を重視したイベントを充実させる。隣接する公園を活用した大型イベントや他社との共創イベントも構想中だ。

泉佐野市独自のふるさと納税制度で資金調達

 ヤッホーブルーイングは1997年、長野県軽井沢町で創業。「ビールに味を! 人生に幸せを!」をミッションに掲げ、日本のクラフトビール市場の成長をけん引してきた。

 創業当初は地ビールブームで好調に売り上げを伸ばしたが、その後赤字が続き、倒産の危機に直面。2004年、楽天市場に出店し、オンライン通販に取り組む中で出合ったのが、「ショッピングをエンターテインメントにする」という楽天市場の考え方だった。

 「三木谷さんが掲げている考え方に強く感銘を受け、ビールをただ売るのではなく、お客さまに楽しい体験をセットで提供することが大事だと気づいた」(井手社長)。そこからECを活用したマーケティング戦略を展開するうちに、リアルでもファンイベントを開催。事業ドメインをビール製造業から「ビールを中心としたエンターテインメント事業」へと変更した。

 「よなよなビアライズ」はその集大成と位置付ける。21年9月に大阪ブルワリープロジェクトが始動し、22年1月に事業化が決定。「我々の知見を結集してつくる、夢の第一歩」と、井手社長は意気込みを見せる。

日経クロストレンド

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