大阪府熊取町にある京都大学複合原子力科学研究所で、1964年の運転開始からおよそ62年間にわたり活用されてきた研究用原子炉「KUR」が、2026年4月23日午後4時をもって運転を終了しました。
老朽化に伴う廃炉の決定によるもので、国内の大学で運転される原子炉は、同研究所にあるもう1基(KUCA)と近畿大学の計2基のみとなりました。
日本の基礎科学と医療を支えた62年
最大出力5,000キロワットの「KUR」は、発電目的ではなく、原子炉から発生する「中性子」を利用した学術研究や人材育成を目的として運用されてきました。
- がん治療(BNCT)への貢献: がん細胞のみを選択的に破壊する「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」の実用化において、世界をリードする大きな役割を果たしました。
- 高度な分析技術: ものの内部を非破壊で調査する「中性子ラジオグラフィー」など、X線では困難な分析手法を全国の研究者に提供してきました。
- 人材の育成: 原子炉の設計や運用に携わる学生・技術者など、年間延べ約3,000人の教育の場として活用されてきました。
今後の展望と課題
同研究所の黒崎健所長は、「学生や研究者が柔軟に使える大学の原子炉で教育を行ってきた意義は大きい。残った原子炉を活用し、人材育成に貢献したい」と述べています。
一方で、専門家からは、大学が予算や人員の都合で原子炉を維持することの難しさや、日本の基礎科学を支える研究環境が縮小することへの懸念の声も上がっています。
今後は国との協議を経て、廃炉作業が進められる見通しです。地元・熊取町で長年、世界の最先端研究を支えてきた施設の大きな節目となりました。
記事概要
- 施設名: 京都大学複合原子力科学研究所 研究用原子炉「KUR」
- 所在地: 大阪府泉南郡熊取町
- 運転終了日: 2026年4月23日
- 主な功績: がん治療(BNCT)の実用化、中性子を利用した各種分析研究、原子力人材の育成








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