郵便局・コンビニ設置 住宅街付近で効果期待
AED(自動体外式除細動器)を傷病者のもとへいち早く届け、救命率を高める取り組みが堺市で進んでいる。昨年12月には、住宅街に近い郵便局やコンビニエンスストアにAEDを置き、現場に着くまでの時間短縮に効果があるかを調べる実験を始めた。結果を踏まえて、効率的にAEDを届ける体制作りを目指す。(前川和弘)
実証実験は大阪公立大の木村義成教授の研究チームなどと行う。堺市内の住宅街に近い郵便局101か所と、コンビニ「ファミリーマート」85か所にAEDを設置。119番で救急要請があると、ボランティアに登録した勤務時間外の消防職員にメールで連絡が届き、AEDを現場に運んだり、応急処置を行ったりする。
実験期間は昨年12月から2026年12月末までで、コンビニや郵便局のAEDがどれだけ活用されたかなどのデータを収集。AEDが到着するまでの時間の短縮に効果があったかを分析する。
実験を行う背景には、AEDの到着に要する時間を少しでも短縮したい事情がある。
心停止になってからAEDの使用が1分遅れるごとに、救命率が7~10%ずつ低下するとされる。現場にいち早くAEDを届けるため、堺市は、緊急時に貸し出してもらえるAEDを事前に登録。119番があると、市消防局が通報者に近くのAEDの場所を知らせたり、AEDを置く施設に連絡して現場に届けてもらったりしてきた。
19年10月に「まちかど救急ステーション」として始めて以後、堺市消防局の管内(堺市、高石市、大阪狭山市)で2416台(今月1日時点)が登録。24年は登録されたAEDが137回使用された。
有効に運用された一方で、課題も見えてきた。市消防局によると、23年に心肺停止で搬送されたケースの約64%が住宅で発生していた。だが、商業施設などAEDのある場所が住宅街から遠いと、到着に時間がかかり、営業終了後の夜間は貸し出しの対応ができない懸念がある。
実証実験で郵便局とコンビニに参加してもらったのは、住宅街の近くにあることが多く、さらに24時間営業のコンビニは夜間の貸し出しにも対応してもらえるためだ。市消防局救急課の担当者は「住宅街付近への設置で救命率の向上が期待できる」と効果を見据える。
実験開始から、すでにコンビニのAEDが活用された事例もあった。市などは今後、救命率への影響を調査する方針で、永藤英機市長は今月7日の記者会見で、「設置場所の有効性などの検証のデータに基づき、仕組みをさらに効果的にし、今よりも安心して暮らせるようにしたい」と述べた。
広がり全国的に マップやアプリも
AEDを短時間で届ける取り組みは全国に広がっている。
一般財団法人「日本救急医療財団」(東京)は、AEDの設置場所を示した「AEDマップ」(https://www.qqzaidanmap.jp/)を公開。35万件以上のAEDが登録されており、住所だけでなく、設置日や使用可能な時間帯も紹介している。
千葉県柏市は、現場近くにいる人にAEDの運搬を依頼するスマートフォンのアプリ「AED GO」を導入。ボランティアとして約2300人が登録し、緊急時に協力してもらう仕組みを整えている。
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