華やかなイルミネーションが街を彩る季節。
ここ岬町では、最新技術やプロの演出に頼らず、住民の純粋な想いだけで創り上げる特別な光の祭典があります。
~みさきの光宴(こうえん)~〈入場無料〉
2025年11月30日(日)~12月13日(土)
会場:みさき公園駅前噴水広場
駐車場:有り/90分無料
点灯時間:平日 18:00~21:00
土日 18:00~22:00
人口わずか1万3千人ほどの過疎化した町で、2万人以上の集客を誇る、「みさきの光宴」。
このイベントの最大の魅力は、そのすべてが地元ボランティアの手によって運営されていること。光の装飾一つひとつに、町を愛する人々の温かい気持ちと、熱意あふれる努力の物語が宿っています。
はじまりは、世界が一変したあの年
「みさきの光宴」のはじまりは、2020年、世界が一変したあの年に遡ります。
当初、岬町商工会青年部が地域の活性化を目指して企画していたのは婚活イベントでした。
しかし、新型コロナウィルスの感染拡大により2年目の開催が不可能に。活動が制限され、町全体が暗い雰囲気に包まれる中、青年部員たちは「この状況下にある町を、希望の光で明るく照らしたい」と切実な願いを抱きます。
さらに、同年惜しまれつつ閉園した「みさき公園」の存在も、町の寂しさをより一層深めていました。
「みさき公園を忘れてほしくない」という強い想いも重なり、その名称を受け継ぐ「みさきの光宴(公園)」プロジェクトが始動しました。
当初は、商工会青年部と有志数名が関わった、わずか2日間限定のイベントでしたが、その光は地域に大きな希望を与え、今日の礎(いしずえ)を築きました。
ゼロからすべてを生み出す奮闘
美しいイルミネーションの裏側には、プロのイベント会社ではない、地元住民だからこその想像を絶する苦労があります。
企業や自治体の大規模イベントと異なり、「みさきの光宴」は、企画から運営、撤去に至るまで、すべてがボランティアの手作業で、ゼロから生み出されています。
現在この運営を担うのは、実行委員長の堀江 佳代さんをはじめとする約20名の精鋭たち。
ふだんは、理容師、美容師、漁港組合の事務員、鍼灸師、郵便局員、電機屋、生協配達員など、様々な職業に就く彼らの中には、この取り組みに感銘を受け、名乗りをあげて参加した人もいます。
特に困難を極めたのが、資金調達と広報活動です。メンバーは、協賛金集めのために地元の企業や店舗を一軒一軒回る地道な声かけを続け、広報専門家がいない中で、チラシ作成から地域への戸別訪問まで自ら行いました。
さらに10万個を超える電球の準備、会場手配、安全対策など、本来プロが担う複雑な裏方作業も、本業の傍ら、夜間や休日返上で行っています。
そして、その地道で熱意のこもった努力は、大きな共感を呼びました。
その結果、いまや協賛企業は地元・近隣企業を含む52社にまで拡大しています。
希望の光を灯そうとする地元住民の真摯な活動が、町全体に認められ、地域の一大イベントとして根づいた証です。この苦難に満ちた準備期間こそ、「みさきの光宴」が他のイベントにはない温かさをもつ理由です。
2025年も例年通り10月上旬から週2回のペースで、仕事終わりに準備を続けてきました。
天候に左右されることも多く、11月中旬には「このままでは間に合わない!」という切迫した事態に直面し、やむを得ず作業時間を2時間延長(23時まで!)。
それでも、誰一人欠けることなく、全員が作業を続けたといいます。
最年少の実行委員長、堀江さんを支えるのは前委員長の北風さんをはじめとする先輩ボランティアスタッフです。そして、この土壇場で発揮された強い団結力と情熱が実を結び、「みさきの光宴」は2025年もその温かな光を地域に放ちます。
さらに、今年は岬町70周年を記念した開催ということもあり、イベントのもつ意義と、成功への期待は格別のものとなりました。
世界一温かいイルミネーション 点灯
今年で5年目を迎えた「みさきの光宴」は、技術や規模ではない、人の温もりと地域愛に満ちた世界一温かいイルミネーション。
その感動的な点灯式が、11月30日(日)に開催されました。
南海電鉄・みさき公園駅前の噴水広場周辺には、多くの町民と観光客が集まり、その瞬間を待ちわびる熱気に満ちあふれました。
スマートフォンを構える人々の間に、静かな期待感が漂います。地元ボランティアの温かい手によって紡がれた物語が、この光景をほかにはない特別な輝きへと昇華させ、観客の胸の高鳴りを一層強くしていました。
「5、4、3,2,1、点灯!」
カウントダウンが終わると同時に、広場を埋め尽くす130万個の電球が一斉にきらめき、大きな歓声とともに会場は力強い光に包まれました。
みさき公園の水を満たすことのない噴水広場が輝き出した瞬間、その温かく濃密な光に胸を打たれました。この空間は、決して広大ではないからこそ、光がギュッと凝縮され、心にじんわりと届くように感じられます。
地元で紡がれた温かい物語も、その光景に強い輝きを与えていました。
そのような背景を知ることで、この小さな広場に灯された光の価値は格段に高まります。
制作に込められた人々の想いが、目の前の輝きと一体となり、より鮮烈に伝わってくるのです。
幻想的な世界をより際立たせるのが、オルゴールやクリスマスソングのエモーショナルな音色です。そのやわらかな調べは、聖夜を感じさせるセレクション。
訪れた人たちは、間もなく終わる2025年に想いを馳せながら、静かな足取りで歩みを進めます。誰もが息をのみながら、目の前の美しい光景をカメラに収めていました。
みさき公園の噴水広場を彩るイルミネーションの最大の魅力は、その高低差を最大限に活かした立体的な演出にあります。広場の緩やかな傾斜や段差が巧みに利用されているため、光の粒一つひとつが平面にとどまらず、まるで天空から地上へ向かって流れ落ちる光の滝のように見えたり、遥か遠くまで続く銀河の道のように見えたりと、壮大な奥行きを生み出しています。
この高低差がもたらすダイナミックなスケール感が、平面的な光景では味わえない唯一無二の風景となり、観客を光の世界へと誘います。
そして、会場のそこかしこに、忘れたくない「みさき公園」の想い出も静かに息づいていました。
かつての公園の面影を残すように輝く動物たちの姿を見て、「懐かしい」と目を潤ませる来場者の姿も見られました。
この場所が人々の心から消えることなく、いつまでも温かい想い出として灯り続けてほしい。そう願う創り手の切実な想いが、「入場無料」というメッセージを添えて、訪れるすべての人に優しく届けられているのです。
目には見えない純粋なエネルギー
ほかにも、大きな木から光の雫が滴り落ちるイルミネーションツリーや、愛らしい真っ赤なリボンをあしらった三角タワーなど、写真映えするスポットが盛りだくさん!
「みさきの光宴」が届けたいものは、きらびやかな光の粒だけではありません。
地域への温かい想いと、忘れたくない過去を未来へ繋ごうとする希望の灯です。
「みさきの光宴」実行委員長・堀江 佳代さん(理容師)は、「こんなに多くの人が来てくれてうれしい!」と、瞳を潤ませながら、その喜びをかみしめます。
実行副委員長を務める谷田さん(美容師)は、光に包まれる来場者一人ひとりにはじける笑顔を向け、その様子を温かく見守っていました。
そして、この光宴の実現に不可欠だったのが、メンバー一堂が全幅の信頼を寄せる初期メンバー、電気のスペシャリスト・北風電機商会 代表の北風さんと、建設のプロ・玉置さんの存在です。
彼らふたりの専門的な技術と尽力なくして、このイベントの成功はあり得ません。
リーダーたちの親しみやすい人柄が、チームを強く結束させ、この優しい光を生み出す原動力となっているようにも感じられました。
目には見えない純粋なエネルギーは、忘れかけていた町の活力を呼び覚まします。
人口を超える2万人以上の集客を誇る理由が、単にイルミネーションの美しさだけでなく、創り手の真摯な想いと温かい光にあることを知りました。
オリジナルグッズの販売やキッチンカーの出店も
期間中、会場ではオリジナルグッズの販売やキッチンカーの出店もあり、来場者は食事をしながら穏やかな時間を過ごしました。
「みさきの光宴」の電飾費用は、岬“ゆめ・みらい”基金、協賛金、募金、およびグッズの売上金より充当されています。
また、会場内にはステージが設けられ、イルミネーション期間を通じて様々なイベントが開催されます。詳細につきましては「みさきの光宴」公式Instagram(外部リンク)をご確認ください。
地元愛が生み出す光の芸術
岬町公式YouTube「ミサキノチャンネル」(外部リンク)には、年々輝きを増している「みさきの光宴 2025」事前PVの映像が公開されています。
その映像を眺めていると、あらためてこのイベントの創り手が地元住民であることに驚きを隠せません。
進化を遂げた2025年の「みさきの光宴」を、ぜひ現地の特別な空気の中でご体感ください。
地元愛が生み出す光は、感動の域を超え、もはや芸術作品のレベルに達しています。
【基本情報】
「みさきの光宴(こうえん)」〈入場無料〉
公式Instagram(外部リンク)
期間:2025年11月30日(日)~12月13日(土)
会場:みさき公園駅 噴水広場
(Googleマップ参照)
点灯時間:平日 18:00~21:00
土日 18:00~22:00
駐車場:あり(南海電鉄みさき公園駅下駐車場に500台駐車可/90分無料)
取材協力 「みさきの光宴」 実行委員会のみなさま
*記事内容は取材当時のものです。
*「みさきの光宴」は、「大阪・光の饗宴2025」のプログラムの一つとして登録されています。


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