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【堺市】認定こども園を集団退職した元職員6人が賠償求め運営法人を提訴へ

 去年以降、保育士が集団で退職した認定こども園の運営をめぐり、園長だった男性を含む元職員の保育士6人が、「不当な人事や、保護者への虚偽の説明があった」として運営法人を相手に精神的苦痛や名誉棄損による損害賠償合計約400万円を求め、近く民事裁判を起こすことが分かりました。

■15人の保育士が集団退職 園児19人も転園

 訴えを起こそうとしているのは、大阪府堺市西区の認定こども園で働き、今年3月までに退職した保育士の男女6人です。

 取材に応じた保育士らによりますと、この園では運営法人の対応への不満を理由に、今年5月末までに保育士21人のうち、計15人が退職。市によりますと、現在、園には0歳から5歳までの園児79人が通っていますが、保育士の集団退職時には、保護者の不安などを理由に、園児19人が転園していたということです。

 訴状などによりますと、元園長は保育士としての専門知識を踏まえ、保育環境の改善にあたっていたにもかかわらず、具体的な説明もないまま「降格処分」になったということです。さらに、この処分について説明会を求めた保育士に対して、法人側は個人面談で対応。納得できる説明をしないまま、退職・在職の判断を求めたとしています。

 また、保育士の集団退職に関する保護者説明会では、退職する職員がいない状況で、法人側は保育士らが他の職員に集団退職を求めていたことなど、ウソの説明をしたと主張しています。

■元職員「保育士から見てあり得ない指導があった」

 園で勤務する前から10年近く保育士として働いていた元職員は、この園で働きだした当初、園内で行われていた指導について、「保育士から見てあり得なかった」と話しました。

 乳児に提供するミルクについては、煮沸した水を冷まして使うべきところ、冷蔵庫で冷やした浄水をそのまま使用していたり、園児の食事を作る調理場に職員が同じ上履きのまま出入りしたりしていたといいます。また、園児とその家族の個人情報が記載されていた文書も施錠無しに各教室で保管されていたとしていて、当時は園長だった男性に意見して改善にあたっていました。

 また、人員不足から職員らが休憩を取れない状態が続いていたことから、元園長は各職員の聞き取りをしたうえで、新人採用や保育教諭のローテーションづくりにあたるなどしていたということです。元園長は直属の上司にあたる副理事長に内容を共有していて、副理事長からは「引き続きがんばってほしい」と伝えられていたということです。

■突然の降格人事「納得できる理由説明はなかった」

 保育士らによりますと、2024年8月末、園では法人のグループに所属する他の保育士に改善内容を伝える「公開保育」が行われました。

 しかし、公開保育で公表された取り組みについて、9月初旬、元園長は別の幹部から電話で「何勝手なことしてんねん」などと叱責され、具体的な問題が明らかにならないまま、約2週間後に降格処分を告知されたということです。元園長はその後、うつ病と診断されました。

 処分の告知後、当時の職員は法人に対し、説明会を開くよう求めたということですが、法人側は応じず、個人面談を指示する指示書を配布しました。個人面談では元園長の降格について、「管理能力不足」以上の納得できる説明がないまま、退職するかどうかの判断を迫られたと訴えています。

 一方、法人と職員の対立が深まる中、職員らと一部の保護者は堺市に対しても介入を求めましたが、保育士4人は話を聞く以上の具体的な行動はなかったと訴えています。市は当時の状況について、「法人の人事に介入することは難しかった」としています。

 元園長は、当時の状況について「子供たちを巻き込んでしまい本当に申し訳なかった」としたうえで、「裁判で事実を明らかにして、法人には謝罪をしてほしい」と語りました。また元職員の1人は、「保護者説明会では、私たちが集団退職を求めたとウソをつかれた。にもかかわらず、堺市内で当時の保護者を見かけると後ろめたい気持ちになる」と話しました。

■集団退職は「人間関係の問題」運営法人は市に説明

 読売テレビが認定こども園の運営法人に対し、当時の状況を問い合わせたところ、法人側は「訴状が届いていないのでコメントできない」と回答しました。

 堺市によりますと、当時、市の聞き取りに対して法人側は元園長の降格処分については「園長としての質」を考慮した結果であると話していて、集団退職については「人間関係の問題が原因となった」旨の説明をしていたということです。

 保育士側は今後、「人員不足にもかかわらず、無理な残業時間削減を求められた」として、同法人に対し、当時の残業代支払いを求める訴えも起こす予定です。

【独自】認定こども園を集団退職した元職員6人が賠償求め運営法人を提訴へ「納得できる理由なく降格」「個人面談で退職判断迫られた」 大阪・堺市(ytv)

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