日本酒メーカーの利休蔵(堺市)は3日、大阪府岸和田市にウイスキーの蒸留所を開設したと発表した。中国出身の経営者のもとでアジアに販路を築いており、ウイスキーにも生かす。生産はこれからだが、一部は貯蔵する樽(たる)単位で売れているという。5年後には年20万キロリットルの生産をめざす。
大阪府南部で本格的なウイスキー蒸留所は初めてで、「泉州」という名称で販売する。サントリーでウイスキーやブランデーの生産に携わったブレンダーの冨岡伸一氏が全工程を監修する。出荷は2028年以降で、投資額は3億円。
強みは日本酒の販売で培った中国、マレーシア、シンガポールなどの取引先とのパイプ。利休蔵の加藤堅社長は「海外には今から樽単位で買いたいというお客さんがたくさんいる。3年以上熟成させたうえで瓶詰めして引き渡す」と語った。
日本製ウイスキーの人気を背景に国内には多くの蒸留所が生まれているが、熟成に時間がかかるため資金繰りが課題となっている。利休蔵は事前販売によって経営を早期に軌道に乗せる。生産量は年2万リットルでスタートし、蒸留所の増設も検討する。
原料の水は日本酒と同じ金剛山の湧き水を用いる。発酵樽は通常ステンレス製を用いるのに対し、フランス産オーク材を採用した。生産を監修する冨岡氏は「乳酸発酵しやすくすることで、10年以上の長期熟成に向いたタフで複雑な(味わいの)ウイスキーにする」と語った。
当初の熟成樽はミズナラ、バーボン、シェリーの3種類。ミズナラは日本独特のため、海外の顧客から人気が高いという。このほか泉州の地域性を出すため、岸和田市特産の桃の木で作った熟成樽も導入する。
加藤社長は中国出身で、日本人との結婚を機に帰化。医療資材の販売会社を創業し、経営している。経営不振に陥っていた利休蔵(当時は堺泉酒造)の立て直しを依頼されて、19年に経営に参画した。抹茶と日本酒を合わせたリキュールなどで海外市場を開拓。日本酒とウイスキーの両方を手掛けることで、経営の安定を目指す。
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