不信任決議を受けて市長が失職した大阪府岸和田市で、市政の混乱とトップ不在の影響が出ている。市は失職した市長の下で発表した一般会計当初予算案を撤回して編成作業をやり直し、新規事業の一部を削減して義務的な経費を中心とする骨格予算案を27日発表した。
岸和田城下を24日、戦国時代を再現して約100人の武者行列が練り歩いた。市長が不在のため、代わりに波積大樹副市長が主催者あいさつをし、市長職務代理者の岸勝志副市長がタレントの田村淳さんを岸和田城PR大使に任命した。取材に応じた田村さんは「市政が混乱している質問に僕は答えられない」と話し、報道陣を笑わせた。
市は10日、市長を失職する前の永野耕平氏が総額944億3600万円の2025年度一般会計当初予算案を発表していた。議会は17日、永野氏に対する2度目の不信任決議を出席した市議23人が全員賛成して可決し、永野氏は同日付で市長を自動的に失職した。これを受け、市は当初予算案を撤回し、一部公共施設の照明のLED化や新庁舎建設の基金積み立て、桜台・光明認定こども園整備、市道整備などの経費を削減した。10日発表の当初予算案と比べて1・8%減の一般会計927億1970万円の骨格予算案を編成した。
岸副市長は取材に対し、「選挙で選ばれた市長がいないので骨格予算にした。市民生活に影響が出ないように粛々と進めていく」と話した。政策的な経費を盛り込んだ予算は、4月6日投開票の市長選で選ばれた新しい市長の下で補正予算が編成される。
このほか、発表していた新しい副市長選任の同意議案も撤回した。副市長は現行の2人から、3月31日以降、当面は1人になる見込み。
一方で、市長の不在は広域連携にも影響を及ぼす。泉州地域の9市4町と地元企業、大学などが連携する「KIX泉州ツーリズムビューロー」の理事長は、永野氏が務め、市長を失職して以降も当面は理事長の職に就く。ビューローは観光地域づくり法人(DMO)として泉州地域の観光振興の事業を担い、事務局を岸和田市内に置く。
副理事長の岬町の田代堯町長は取材に対し、「前に進まないのは好ましくない。これから観光事業を大阪・関西万博に向けてやっていかなければいけない」と懸念を口にした。田代町長によると、理事長の後任に副理事長の辻宏康・和泉市長の名前が挙がり、岸和田市長選や6月1日投開票の和泉市長選の結果もふまえて調整を進めるという。【中村宰和】
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