女性との性的関係をめぐる裁判で和解が成立した大阪・岸和田市の永野耕平市長に対し、市議会で17日、再び不信任決議案が提出され、全会一致で可決されました。
市長は17日付けで失職し、50日以内に市長選挙が行われます。
岸和田市では、女性との性的関係をめぐる裁判で和解が成立した永野市長が市議会から不信任を議決されて議会を解散したことに伴う市議会議員選挙が行われ、17日、選挙後、初めてとなる定例の市議会が開会しました。
午後の本会議では、公明党の議員が「市の混乱を招いた市長の責任は非常に重いにもかかわらず、辞職しないだけでなく、大義なく議会を解散しばく大な市民の血税を使ったことは言語道断だ」などとして、市長に対する不信任決議案を再び提出しました。
そして、採決の結果、出席した23人の議員の全会一致で可決されました。
市長は17日付けで失職し、50日以内に市長選挙が行われます。
【市長妻は採決参加できず】
議会の解散に伴う岸和田市の市議会議員選挙では、永野市長の妻、永野紗代氏も初当選しました。
紗代氏は、不信任決議案に反対する意向を示していましたが、地方自治法には、議員は自身や親族などに利害関係のある議事には参加できないという規定があり、決議案の審議を前に議場から退席し、採決には参加しませんでした。
【市民は】
大阪・岸和田市の永野耕平市長に対する不信任決議案が再び可決されたことについて、市民に聞きました。
30代の主婦は「不信任案が可決されてほしいと思っていました。女性問題を抱えたまま市長を続けられると、不信感が募ると思います」と話していました。
60代の自営業の男性は「永野市長は不倫を認めていて、市議会議員選挙に加え市長選挙が行われることになる。選挙にかかる費用は多額で、むだな出費になるのでおかしいと思います」と話していました。
70代の主婦は「女性問題については道徳観念しだいかもしれませんが、そういう人が市長を続けるのは少し普通ではないと思います」と話していました。
また、60代の無職の男性は「岸和田市のことをちゃんとやってくれればよく、女性問題はプライベートのことなので市政とは関係ないと思います」と話していました。
70代の無職の男性は「不祥事は不祥事かもしれませんが、当人どうしの問題なので、岸和田市政をしっかりやってくれたら問題ないと思います」と話していました。
【市長「不信任は民意」】
大阪・岸和田市の永野耕平 市長は、不信任の議決を受けて、17日午後、記者団の取材に応じました。
永野氏は、「不信任決議の文章を見ると『違うな』と思うところもあるが、今回は市議会議員選挙で公約として不信任を掲げて当選した議員が決議案を提出したので、民意だと思う。前回のように大義がないとは思わない」と述べました。
そのうえで、記者団から失職に伴う市長選挙に立候補する意向があるか問われたのに対し、「市政改革は道半ばで、まだまだやらなければいけないことがある。岸和田市のために働きたい」などと述べ、立候補に意欲を示しました。
【議長「市政安定化を」】
本会議のあと、岸和田市議会の烏野隆生 議長は、市長の部屋を訪れ、不信任を議決したことを永野市長に通知しました。
烏野議長は記者団に対し「市議会議員選挙の期間中、『市長を辞めさせてほしい』という声が一番大きく届いていて、今回、それを達成できた。二元代表制で市長と議員が両輪をつくりながら市政を安定化させ、お互いに話し合いができる人に市長になってほしい」と述べました。
【これまでの経緯】
永野市長と女性との性的関係をめぐる裁判の和解は、去年(2024年)11月、女性の代理人弁護士が記者会見で明らかにしました。
代理人によりますと、女性は2019年に永野市長と知り合い、その後、繰り返し性的関係を求められたと訴えていました。
性的暴行の疑いで被害届を出しましたが市長は不起訴となったため、2022年、大阪地方裁判所に民事裁判を起こし、市長に2200万円余りの損害賠償を求めました。
これに対し、市長は「同意があった」と主張し、訴えを退けるよう求めていました。
大阪地方裁判所は「市長は女性の雇用を左右しうる優越的な立場にあり、対等の関係とは言えない。公人であり、配偶者もいることから性的関係を持つことは自制すべきで非難は免れない」などという所見を示して和解を勧告し、去年11月、市長が謝罪し、500万円の解決金を支払うことで和解が成立したということです。
永野市長は当初、報道陣や市議会に対し、「裁判は秘匿で行われたので内容については言えない」などとして事実関係の詳しい説明を避けていました。
所属していた大阪維新の会は、説明責任を果たさなければ除名とする方針を決め、その後、市長は記者団の取材に対し「数年前から1年ぐらいの期間、女性と不倫の関係にあった。極めて不適切だった」と謝罪したうえで、「対等な関係だと思っていた。性加害や女性の権利を侵害することはなかった」などと説明しました。
こうした説明を受けて、大阪維新の会は、除名ではなく2番目に重い離党勧告の処分を決め、永野市長は離党します。
一方、市議会は「市長が説明責任を果たしているとは判断できない」などとして、全会派一致で市長に議会や委員会に出席しないよう求め、市長が欠席したまま審議が行われる異例の事態が続きました。
そして、12月20日、市議会で「混乱を招いた市長の責任は重大だ」などとして、永野市長に対する不信任決議案が提出され、可決されました。
これに対し、市長は「不信任決議案には、事実ではないことや的外れなことが書いてあり、大義がない」などとして議会を解散します。
このあと、永野市長は妻とともに記者会見を開いて、裁判になった女性について言及し、「私との交際が終わったあと、私たち夫婦と家族同然の関係で金も貸していた男性と付き合い始めたと思っている。ほどなくして私に対する民事裁判などが始まり、相手側の主張には全く知らない話がたくさんあった」などと述べました。
これに対し女性の代理人は「市長は単なる不貞行為にすり替えようとしている。女性などについて虚偽の内容を含むプライバシー侵害を行っている」などと反論するコメントを公表しています。
議会の解散から1か月半余りたった今月(2月)2日、議会の解散に伴う市議会議員選挙の投票が行われ、22人の前議員を含む24人が当選しました。
選挙前にNHKなど6つの報道機関が共同で行ったアンケートでは、当選者のうち22人が選挙後の市議会で永野市長への不信任決議案が提出された場合、「賛成する」と答えていました。
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