今、滋賀県・草津市の市街地にムクドリの大群が住みつき、騒音で近隣住民を悩ませています。
実は、同様の現象は全国各地で起きているのです。
対策を続けても、なかなか解決しないという「ムクドリ問題」。その背景を調べると、思わぬ事実が浮かび上がってきました。
■鳴き声は「ゲームセンターレベル」 「ジュラシックパークくらいうるさい」の声も
滋賀県草津市、南草津駅の西側。スポーツクラブなどが並ぶエリアで、日が暮れる頃に異変が…。
【記者リポート】「何百羽でしょうか、数えきれないくらいのムクドリが一斉に木の方にやってきました」
黒い塊となって飛び回るのは…「ムクドリ」。
このエリアをねぐらにしているのか、次々と木にとまると、けたたましい音で鳴きます。アプリで音の大きさを調べてみると、ゲームセンターの店内と同レベルの“80デシベル”という結果に。
さらに木の下には、ふんの跡もあります。
【近くで働く人】「すごいです。ジュラシックパークくらいうるさい。ここは何?みたいな。雨が降った後はふんが半生状態になってすごく臭いですね。夜歩くんだったらここ、こんな感じですね(頭上を確認しつつ、木の下から離れて歩く)」
■「会話が聞こえないときも」 せっかく作ったテラスが…
今、このような状況になっている場所が、全国各地にあります。
SNS上に投稿された、ムクドリの集団をとらえた映像。共通するのは、駅の付近や、商業施設が立ち並ぶ市街地であることです。
一体なぜなのか?専門家は、かつて駅周辺で行われた開発が影響しているのでは、と指摘します。
【都市鳥研究会 越川重治副代表】「(かつては)ケヤキの防風林がたくさんあって、そういうところに集まっていた。ムクドリってケヤキが非常に好きなんですよね。駅前にケヤキをたくさん植えたので、それが戦後、だんだんと大きくなって、それで来たんじゃないかといわれている」
番組は、草津市に住む岩城さんのお宅を取材しました。家があるのは、ムクドリがねぐらにした街路樹の、目と鼻の先です。
【岩城良夫さん】「そこで寝てるんで、ムクドリが早朝に飛び立つときに、ものすごく騒音したり、車の上にふんが落ちたりね。(状況は)悪くなってると感じますね。増えていますね」
外で食事をするのが好きな岩城さん。庭にテラスを作っているそうですが…。
【岩城良夫さん】「会話が聞こえないぐらいの音(鳴き声)の時もありますね」
Q.かつてのテラスはもっと優雅にご飯を食べられる場所だった?
【岩城良夫さん】「そうです!ここで一日、本を読んだりね、それが大好きで。それが最近、あまりにもストレスが溜まるような場所になってしまって、残念やなと思ってます」
■「鳥獣保護法」で無許可の駆除は禁止 原則「追い払うのみ」
そんなムクドリと悪戦苦闘を続けているのが、草津市の職員です。まず、ムクドリが住みつく木を剪定しましたが…。
【滋賀県草津市 道路課 寺田新一さん】「切っていない木に移るということがあるので…」
解決にはいたらず。かといって、せっかく整えた街路樹を、全て切るわけにもいきません。そこで…。
ムクドリが嫌がる音を出し、追い払う作戦を実施。街路樹の前を端から端まで歩き、ムクドリの一掃を狙います。
しかし、作戦もむなしく、150メートルほど歩いてみると…。
【滋賀県草津市 道路課 寺田新一さん】「(鳴き声が聞こえる方を指さし)あそこですね」
Q.まだムクドリが鳴いていますね?
【滋賀県草津市 道路課 寺田新一さん】「音が鳴る方向とは逆方向に逃げてきたという形になってます。おそらく一時しのぎかなと」
結局、ムクドリは少し移動しただけ。時間がたつと、同じ場所に戻ってきてしまうのだといいます。
実は、鳥獣保護法により、ムクドリは許可なく駆除することが禁じられています。そのため、現実的な選択肢は「追い払うこと」のみ。
草津市では、辛抱強く取り組んできたということですが、根本的な解決はまだ見えません。
【滋賀県草津市 道路課 寺田新一さん】「追い払っても時間がたつと帰ってくる、いたちごっこのような感じになっているので、市としても、大変苦慮してるところではありますね」
■鳥獣対策用の“アイテム”で追い払う自治体
一方、新たな技術でムクドリに立ち向かう自治体も。
【阪南市 河川農水課 八木望主事】「特にひどかった場所がこちらの十字路。露骨に分かるくらいふんが落ちてましたね」
Q.今はないですね。
【阪南市 河川農水課 八木望主事】「そう、今はないんですよ」
大阪・阪南市では、10年ほど前から、電線にムクドリが群がり、鳴き声やふんの被害に悩まされてきました。
住民は…。
Q.ムクドリがたくさんいた?
【住民】「いました!“鳥の映画”みたいに」
これまで電線に「針」を取り付けたり、ムクドリが怖がる「ミミズク」の像を設置したり、あらゆる対策をしましたが、効果はなく…。
3年前、ついに新たな技術に出会ったのです。
【阪南市 河川農水課 八木望主事】「こちらのライトを使って対策をさせてもらっています」
鳥獣対策用のLEDライト、「ホロライト・チェッカーズ」。鳥が嫌がる刺激的な光を出すというもので、これをムクドリに当てると…群れが一斉に逃げていきます!
阪南市でも取り入れた結果、2023年からはムクドリの姿をほぼ見なくなったということです。
しかし、まだまだ油断はできません。
【阪南市 河川農水課 八木望主事】「戻ってくる可能性はあるので、これで終わりではなく、継続的にやっていく必要はある」
ムクドリを何とか追い出そうと、対応に追われる自治体。
一方で、専門家に聞いてみると、まさかの事実が!
【都市鳥研究会 越川重治副代表】「実はこれ、解決策にはなっていなくて、隣の自治体に移動してしまうんですよね」
■追い払うことで増加するやっかいな存在 しかし「カメムシ食べる」役割も
大群で市街地にやってきて、騒音被害などが問題となっているムクドリ。その解決策について専門家に聞くと、思わぬ答えが返ってきました。
【都市鳥研究会 越川重治副代表】「追い出して、それがうまくいったと言っているんですけれども、実はこれ解決策にはなっていなくて。(追い出されたムクドリは)郊外には行かないんです。追跡して検証すると、隣の駅だとか、あるいは隣の自治体に移動してしまうんです。人間が何もしなければ、大きなねぐらが数カ所(しかない)という感じだった。対策をすると、また別の場所に移っていくという」
なんと、人間がムクドリを追い払うことで新たなねぐらができて、むしろ市街地に住みつく数が増えてしまったというのです。
また、嫌われてばかりのムクドリですが、これからの季節に気になる、「あの虫」対策に一役買っているそうで…。
【都市鳥研究会 越川重治副代表】「カメムシも食べています。ムクドリを全部退治してしまうと、おそらく農業だとか、街路樹にもかなり大きな影響が出るんじゃないかと思いますね」
生態系には必要?でも、近くにいたら困るムクドリ。その対策は、困難を究めています。
■住民悩ます「ムクドリ」根本解決は難しい
「ムクドリ」の大群による騒音やふん害に住民が困っているケースが、全国で多発しているようです。
自治体の職員が苦労してムクドリを追い払っていますが、ある場所から追い払っても、別の近くの街に移動してしまい、根本的解決には至らないということです。
根本的解決、つまり駆除や捕獲することは、法律上難しくなっています。
【菊地幸夫弁護士】「鳥獣保護法という法律がありまして、野生の動物や鳥を勝手に捕獲したり、殺したりすることは禁じられています。許可があればできるんですけど、簡単にその許可は出ません。(騒音やふん害で駆除することは)難しいと思います」
■「ムクドリ」増加 一方で「スズメ」絶滅危機 大きな視点で『生態系』考える必要
ムクドリが増えている一方、身近な鳥であった「スズメ」が絶滅してしまうかもしれないという気になる話があります。環境省の調査で、「絶滅危惧種」の基準に相当するペースで急速に減少しているということです。
原因ですが、都市鳥研究会の越川副代表によると、「繁殖場所」「エサ(農作物・昆虫)」の減少も考えられるということです。
【関西テレビ 神崎博報道デスク】「スズメの繁殖場所や好む場所として、例えば一軒家の瓦屋根の隙間であったり、軒先といった所があります。最近ですと瓦屋根が減っています。あとそもそも一軒家が減って、集合住宅やマンションとなり、スズメの好む場所が街中からどんどん減っていることがポイントかなと思います」
スズメが減ることは生態系にも影響が出ることになります。
都市で生活している人は困ることもあるかもしれませんが、地域あるいは国、さらに地球全体で生態系の保護を考える必要もありそうです。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年10月17日放送)
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