特産タオル 受注に一役
泉佐野市をもっと多くの人に知ってもらいたい――。同市東京事務所長を務める南幸代さん(59)は、その一心で奮闘している。飛び込み営業のように特産品をPRし、その様子をSNSで発信するなどし、市ゆかりの首都圏の人らでつくる「東京いずみさの会」会員を急増させるとともに、特産品「泉州タオル」の受注につながった例もある。南さんは「少しでも泉佐野と多くの人がつながるタネをまきたい」と意気込む。(北口節子)
府内自治体で東京に事務所を置くのは、政令指定都市の大阪市と堺市のほかは、中核市も置いておらず珍しい。新型コロナ禍前の2018年度にJR東京駅近くに開設され、現在は、丸の内のシェアオフィス内にある。
主な業務は、市による関係省庁への要望活動の調整や、関係人口を増やすための首都圏でのプロモーションなど。コロナ禍の間はイベントなどの開催がなく、PRの機会は激減し、「数値など、目に見える効果があったかは難しい」のが実情だった。
南さんはこれまでに、市民病院を移転するプロジェクトチームや泉州南消防組合の理事などを歴任してきた。23年に東京事務所長に着任したが、首都圏では「『泉佐野』と名乗っても響かない。関西空港も思っていたより認知されていない」との現実に落ち込んだという。
大阪らしさ、泉佐野らしさを感じてもらうにはどうすればいいか。思いついたのが、受け取った人が困ることはない実用品である泉州タオルを配ることだった。
東京で開かれるイベントや会議に、「2025大阪・関西万博」のロゴが入った帯で巻いた泉州タオルを名刺代わりに持参。会う人たちを東京いずみさの会に勧誘した。それまで約190人だった会員を、2年足らずで約620人にまで増やしてきた。
ある日、あいさつに訪れた企業から「関係者に配る社の記念品を泉州タオルにしたい」と声がかかった。色や手触りなど企業側の要望に沿うように、サンプルを提示しながら、納期や予算などを確認し、市内の大阪タオル工業組合に橋渡しした。
東京いずみさの会は年数回のニュースレター発行のほか、交流会を年1回開いており、年会費などは不要。南さんは、会員には東京事務所が入るシェアオフィスの共有スペースでサロンのように集ってもらい、そこから「互いの知恵を出し合うつながりが生まれたら」とも願う。
市役所内には、企業誘致や定住促進など、さらなる実績を求める声もある。簡単なことではないが、それでも南さんは前を向く。「自ら動けば、何かしら誰かと出会える。『動く東京事務所』として、首都圏で泉佐野のプロモーションを仕掛けていきたい」
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