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関西エアポート 関空の不同沈下対策 建物全体をジャッキアップ(建設通信新聞)

【施工=大林組/海上空港特有の工事進む】
 関西エアポートは、関西国際空港の開港後、空港島と島内新設の地盤沈下対策に取り組んでいる。 島内の場所によって沈下量は異なるため、施設内の柱をジャッキアップし、 均等な高さになるよう調節しなければならない。 海上空港に不可欠な世界でも類を見ない工事の現場を追う。
 大阪府田尻町、泉佐野市、泉南市にまたがる空港島では、開港から30年以上経過した現在も地盤沈下が続いている。空港島の防災対策と建物の安全性のためにも地盤沈下対策が不可欠となる。対策は、島内全体の対策と建物の対策に分かれる。
 ジャッキアップ対策は、空港島内にある施設の柱を油圧ジャッキで持ち上げ、フィラープレートを挿入することにより、床高さを均等に調節するもの。空港島内全体と施設の場所によって沈下量が違うため、高さをそろえる必要がある。
 例えば、第1ターミナルには950本の柱があり、3年に一度工事を行う。一度の工事で工期は約1年必要となる。工事では、1日に多い日で8-10本の柱を対象に1回当たり平均10mmかさ上げする。
 柱のジャッキアップに加え、設備や壁なども高さの調節が必要となる。空調設備はダクト部分で差を吸収するほか、空調機器の下にもフィラープレートを挿入する。壁は天井につり下げられているため、床側の土台部分とスライドすることで、施設を維持している。電気配線も施工段階で余分な長さを確保しているため、ジャッキアップによる変化を吸収できる。
 柱の高さの差は、柱内に設けたレベル計測器内の水位差で計測する。全ての柱に通じる連通管内に水を送り、水位差が発生すると、高さに差があることが分かる。同社は過去の空港島と施設の沈下量を集計したデータを基に、3年先の沈下量を予測しているため、適切な時期にジャッキアップ対策を施している。
 15日、建物の沈下対策として実施しているジャッキアップ工事の現場が報道陣に公開された。北ウイングのジャッキアップを進めており、施工は大林組が担当している。国際線のバスラウンジにある柱を1台当たり300tの油圧ジャッキ2台で持ち上げ、16mmのプレート1枚を挿入し、6mmのプレート1枚を抜き、10mmかさ上げした。
 最終的に26mmかさ上げする計画だが、ウイング内全体で高さのバランスを調整しながら工事を進めるため、一度にかさ上げする量は少なく設定している。工事は2024年夏に着手しており、25年内に完成する見込み。

建設通信新聞

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