大阪母子医療センター(大阪府和泉市)で、産科主任部長(50歳代)の男性医師が部下に日常的にパワーハラスメントを行っていた問題で、センターを運営する大阪府立病院機構は26日、相談への対応を怠ったなどとして、センタートップの倉智博久総長と光田信明病院長を戒告の懲戒処分にした。主任部長は11月末に退職し、処分対象にならなかった。
第三者調査委員会の報告書などによると、倉智総長と光田病院長は、部下からのパワハラに関する相談を数年間にわたって放置。第三者委でパワハラが認定された後も、主任部長と被害を受けた部下を即座に引き離す措置を取らなかった。機構は主任部長の懲戒処分も検討したが、11月30日付で依願退職しており、「規則上、退職者は処分できない」としている。
一連の問題では主任部長は部下らの人格を否定するような発言や、休暇取得を妨害するなどの行為を繰り返した。2022~23年に3度の公益通報が寄せられたが、機構やセンターが適切な調査体制を組まず、問題の発覚と対応が遅れた。
「やめてしまえ」大声で罵倒、泣き崩れた医師
パワハラを受けた一人で現在は別の医療機関に勤める男性医師(30歳代)が読売新聞の取材に応じた。主任部長からの罵倒や 叱責 で、一時は「医師をやめよう」とまで思い詰めたという。
地方の大学病院から大阪母子医療センターに派遣され、1年間勤務。主任部長から「医者失格」「お前が診察すると患者が不幸になる」などと言われたという。地方を侮辱し、「人間よりも動物のお産の方が多く、大阪で学んでも役に立たない」とする暴言も浴びせられた。男性は「ターゲットにされていた」と振り返る。
最も苦痛だったのは、帝王切開を行う直前に正当な理由なく執刀医から外されたことだ。この症例とは無関係の質問に対し「まだ勉強できていない」と答えたところ、主任部長が激怒。同僚らの前で「そんなやつに任せられない。やめてしまえ」と大声で罵倒され、その場で泣き崩れた。
男性は「マラソンで42キロを走った後、残り195メートルを他人にゴールされるような仕打ちだった。信頼関係を築いてきた患者さんに申し訳なかった」と振り返る。
男性は退職前、「被害者をこれ以上増やしたくない」とパワハラの詳細をセンターに伝え、改善を求めた。だが、訴えが放置されていたことを調査報告書を読んで初めて知り、「がくぜんとした。もっと早く対応していれば、ここまでの事態にならなかったのでは」と批判した。
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