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【岸和田市】飲酒運転で親子を車ではね死傷 危険運転致死傷で起訴の男に懲役12年の実刑判決「飲酒運転を軽視し厳しい批判は免れない」大阪地裁堺支部(ytv)

 去年、大阪府岸和田市で酒を飲んで車を運転し、親子をはねて母親を死亡させ、息子に大ケガをさせた危険運転致死傷の罪に問われている男について、24日、大阪地裁堺支部で判決があり、「結果は取り返しのつかない重要なもの。飲酒運転を軽視する態度に厳しい非難は免れない」として、懲役12年の実刑判決を言い渡しました。

 男の軽率な行動によって奪われたのは、必死に生きた母親と息子の二人三脚の日々でした。

 事故で大ケガをした息子は判決の後、取材に応じ「母親に『求刑通りの刑が出たよ』と報告したい。被告には犯した罪と正面から向き合ってほしい」と涙ながらに語りました。

■命を奪われたのは目の不自由な息子に付き添っていた母親 被告は起訴内容認める

 起訴状などによりますと、無職の岩井拓弥被告(31)は、2023年12月30日午前7時ごろ、岸和田市で酒を飲んで車を運転し対向車線の路側帯に侵入。歩いていた大久保春江さん(当時82)とその二男・孝之さん(51)をはねて、春江さんを死亡させた上、孝之さんに外傷性くも膜下出血など加療5か月の大ケガをさせたとして危険運転致死傷の罪に問われています。

 事件当日、春江さんは目の不自由な孝之さんが駅へ行くのに付き添っていたということです。

 岩井被告は「間違いありません」と述べ起訴内容を認めていました。 

■忘年会でビールジョッキ8杯 約8時間半で4軒はしごした末に運転 「新しく買った車を知人に見せたかった」

 これまでの裁判で、岩井被告は事件前日、忘年会に参加するため車で飲食店に向かい、夜通しで酒を飲んだ翌朝、再び車を運転して帰る途中に事件を起こしたことが明らかになっていました。

 午後8時半ごろから始まった忘年会では1軒目にビールをジョッキで8杯ぐらい飲み、翌朝5時ごろまで4軒の店をはしごして飲酒したということです。

 車で参加した理由は2つ。「電車の時刻に拘束されるのが煩わしかった」、「新しく買った車を知人に見せたかった」ということでした。

 岩井被告側は「普段は代行を呼んでいて、この日もそのつもりだった。運転した当時の状況は記憶がなく、病院のベッドで目を覚ましてから意識がはっきりし、そこで初めて人が亡くなったことを知った」としています。

 検察側は「被告は運転を思いとどまれる事情はいくつもあったにもかかわらず、それでも飲酒運転をし、路側帯のライン内にいた落ち度のない春江さんを死亡させた。大ケガをした孝之さんの精神的苦痛も甚大だ」として、懲役12年を求刑していました。

■遺族が法廷で訴え「目の不自由な弟を必死に支えてきた母は、とても優しく頼もしかった」「一生許さない」

 19日の裁判では、被害者参加制度で裁判に出席している亡くなった大久保春江さんの長女と長男が証言台に立ち、胸の内を語りました。

 大久保春江さんの長女
「母は、私たちきょうだいを分け隔てなく育ててくれました。母は、私が仕事で忙しく子どもの面倒を見きれない時には、代わりに子どもに食事を作ってくれたり水族館に連れて行ってくれたりし、何かあれば駆け付けてくれました。とても優しく、そして頼もしい母でした。父の介護と、目が不自由な二男の世話もしていました。二男、つまり私の弟は成人になってから視力をなくしましたが、必死に支え続けた母と弟の二人三脚で生きてきた日々を、無謀極まりない運転によって破壊され、計り知れない悲しみがもたらされました。いつも気にかけていた弟を残して命を奪われた母は、無念だったと思います。弟も全身骨折などの大ケガをして、今でも生活に不自由しています。被告人にはできるだけ重い刑が下されるべきだと思います」

 大久保春江さんの長男
「病院に到着すると、医師から母が死亡したことが告げられ、母の左足はあり得ない方向を向いていて、私は震えるとともに、地に足がついていない感覚で、これは現実かと、死を受け入れられませんでした。弟の目が完全に見えなくなる前に、職に就けるように専門の学校に通わせたり、点字を学んだり、弟の日々の食事にも留意したり、それでも『私は大丈夫』と言って後ろ向きな言葉を発しない、強い人でした。母の死を知った弟も大ケガをして病院にいましたが、『母の分も頑張ると、母に伝えてほしい』と私に言いました。その後、必死にリハビリをし、母がいなくとも1人で生活をしていこうと頑張っていますが、目の見えない弟にとって家でじっとしているほうがつらいのかもしれません。弟は『自分が母に一緒に駅に来てもらわなければ、母が死ぬことはなかった』と後悔を口にしています。被告人からは今日まで誠意ある謝罪もありません。幸せな家族の日常はめちゃくちゃにされ、罪もなく懸命に生きた人の命と日常を被告人の行為によって奪われた苦しみは一生癒えません。一生許さないです」

 岩井被告は終始、遺族に目を向けず下を見つめていました。

 訴えの後、岩井被告は「僕の安易な行動で事故に巻き込み申し訳ありませんでした。再発しないために、今後運転はしないしお酒も飲まず、犯した罪を一生背負って償います。この先、考え方、生き方を改め直します」と話し、裁判は結審していました。

 24日午後、大阪地裁堺支部で判決があり、裁判長は「結果は取り返しのつかない重要なもの。他の移動手段も容易に選択できたのに安易に自動車を運転していて情状の余地はない。飲酒運転を軽視する態度に厳しい非難は免れない」として、岩井被告に懲役12年の実刑判決を言い渡しました。

 判決の後、事件で大ケガをした孝之さんが、時折涙声になりながら取材に応じました。

 事件で大ケガをした二男の孝之さん(51)
「母親に求刑通りの刑が出たよと報告したいと思います。事件後、被害者に対しての行動がほったらかしで、自分が犯したことに向き合っていないと感じていたので、被告には犯した罪と正面から向き合ってほしい。飲酒運転はしていけないとしっかり認識してほしい。なるべく事故後の自分を取り戻したい。そうすることで母親も安心してくれると思う」

ytv

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