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【和泉市】国宝、重文ざくざく…泉州の隠れ美術館、万博契機に訪日客獲得へ 和泉市久保惣美術館(産経新聞)

国宝や国重要文化財を含む約1万3千点の所蔵品数を誇り、4千坪という広大な敷地を有しながら、世にあまり知られていない美術館が大阪府和泉市にある。地元篤志家の寄付によって創設された和泉市久保惣(くぼそう)記念美術館だ。開会中の2025年大阪・関西万博に合わせ、浮世絵の展覧会や外国人向けツアーを実施し、認知度アップに懸命だ。

海外の美術館も注視

綿花栽培を背景に綿織物業が発展した泉州。この地で明治時代から綿織物業を営み、有数の企業となった「久保惣」の創業家、久保家は代々、美術品を収集してきた。だが、業界の国際競争の激化などで廃業を決め、地元への恩返しのため美術品や土地、建物を市に寄贈。昭和57年に市立美術館として開館した。

東洋古美術を中心とする1万3千点には、中国・南宋期の「青磁(せいじ) 鳳凰耳花生(ほうおうみみはないけ) 銘万声(めいばんせい)」、平安時代の和歌を書写した「歌仙歌合(かせんうたあわせ)」の国宝2点を含む。宮本武蔵筆の「枯木鳴鵙図(こぼくめいげきず)」など国重要文化財29点のほか、葛飾北斎や東洲斎写楽の浮世絵、ルノワール、モネなどの海外作品も。現在も久保家から美術品購入資金の寄付があり、収蔵品は増え続けている。ゴッホの初期作品をローマの美術館に貸し出すなど、世界の美術館からも注視されている。

アクセス道にアート作品

一方で、「当館に数々の名品があることが知られていないのは残念」と話すのは同館を運営する市文化振興財団の藤原明理事長。最寄り駅からの遠さや戦略的な広報宣伝活動の不十分さなどもあり、来館者は開館年度の4万7千人が最多で、新型コロナウイルス禍の令和2年度には1万人を下回った。

「万博で国内外から多くの来場者を見込める今年度は、『認知度アップイヤー』。さまざまな仕掛けでアピールしたい」と今年度は5万人を目標にする。

浮世絵を起爆剤に

その起爆剤として期待されるのが浮世絵だ。パリ万博(1867年)で紹介され、19世紀後半の日本ブームを牽引(けんいん)した浮世絵は、いまなお外国人に親しまれている。同館では6千点以上を収蔵する強みを生かし、「’25 UKIYOE EXPO in IZUMI」と銘打ち、今年度は浮世絵を中心に5つの展覧会を順番に展開し、来場者アップを目指す構えだ。

開催中の「浮世絵の黄金時代」(6月8日まで)では、NHK大河ドラマ「べらぼう」の主人公、蔦屋重三郎が版元を務めた東洲斎写楽の「石部金吉」や喜多川歌麿の「高島おひさ」などを展示。また、6、7、9月には訪日外国人や在外公館の関係者を対象に、モニターツアーを実施する。浮世絵展鑑賞や書道体験、周辺の散策などを通じて、同館の魅力を交流サイト(SNS)で積極的に情報発信してもらうことが狙いだ。

最寄りの南海和泉中央駅から徒歩30分というアクセスの悪さも逆手に取った。駅から同館までの公園や建物の壁に、現代アーティストによる収蔵品の北斎や写楽、モネやゴッホなどのリライト数十点を掲げて、道すがらアート作品が楽しめる工夫も凝らしている。

藤原理事長は「名品を誇るわが美術館を国内外に知ってもらうことで、瀬戸内海の直島のように世界が注目するアートスポットとして発展していけたら」と期待を込める。問い合わせは同館(0725・54・0001)。(横山由紀子)

産経新聞

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