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【堺市】実は桜の名所の堺 ヨサノアキコ、チシマザクラ…種類いろいろ 挑戦が咲かせた奇跡の桜も(産経新聞)

2月下旬、堺市の「大仙公園」にはもう《春》が訪れている。一番早く咲くカワヅザクラ(河津桜)には蜜を吸うメジロの姿も…。大仙公園には約40種約千本の桜があり、これから4月下旬まで桜花爛漫(らんまん)。《奇跡の桜》と呼ばれる珍しい桜や「ヨサノアキコ」と名前がついた桜があるという。

大仙公園は「仁徳天皇陵古墳」の目の前にある広大な公園。JR阪和線百舌鳥駅から徒歩5分。南海電鉄高野線堺東駅からバスに乗っても行ける。1月の連載で登場いただいた「NPO法人堺観光ボランティア協会」の和田千香さんに案内をお願いした。

和田さんは同協会一の「桜好き」で、名カメラマンでもある。大仙公園にある約40種のすべての桜を撮り、毎年3月に開催する「桜花爛漫ツアー」のチラシやポスターに掲載。『大仙公園桜物語』と題したリーフレットも作った。

「では、行きましょう!」とやってきたのが《奇跡の桜》と呼ばれるチシマザクラ(千島桜)。他の桜のように芝生の中に植わっているのではなく、ゴツゴツとした岩場に植えられている。「ロックガーデン」というらしい。

「なぜ奇跡かというと、樺太や千島列島で5月に咲くこの桜は、本州では暖かすぎてなかなか育たない。多くの公園が失敗しています。ここ大仙公園が育成に成功させたんです」

関西一の名所に

どうやって《奇跡》を起こしたか―は、同公園で樹木医を務める木村仁さんに解説してもらおう。

「北海道とは全く気候が違いますからね。まず、少しでも土に熱がこもらない工夫をしたんです」。古墳が多いこの一帯は粘土質の土が多く、まずは土の入れ替えから。「水はけをよくするため、粒の大きな土から順番に小さなものへと入れていきました。また、熱をこもらせないため古い瓦を割って土中に斜めに差し込んでいく。靴の裏についた菌やカビが土に混ざらないようにと、靴を脱いで作業をしました」

チシマザクラは1本の幹からなるのではなく《株状》になって土から出ている。木村さんによれば「風が強く厳しい環境なので、幹1本では折れたら終わり。株状であれば1本が折れてもどれかが生きている。生き抜くための工夫」という。

株の周りは岩が並べられた「ロックガーデン」。北海道に近い景観―ではなく、熱伝導が低い岩を配置することで地面の高温化を防いでいるのだ。「ロックガーデンの斜面はすべて北向き。そしてチシマザクラの傍らには日よけとしてオオヤマザクラ(大山桜)を植えています」。平成7年から始まった育成は今年で30年。木の背丈は約2メートル。毎年3月下旬から白い、清楚(せいそ)な花を咲かせる。

ほほえましいのはそばに立っているオオヤマザクラとの雑種が生まれていること。「日陰を作って自分を守ってくれているオオヤマザクラと恋におちたんです」と和田さんはうれしそうに笑った。

素朴な疑問がひとつ。そもそもなぜ、チシマザクラに挑んだのだろう。育成初期から携わり現在、堺市大浜公園事務所の宮本博行さん(61)はいう。「どこもできなかったから挑戦したんです。日本一とは言わないまでも、関西で一番の桜が名所の公園にしたかったんです」

桜といえばソメイヨシノしか知らなかった筆者の目から、花びらがハラリと落ちた。

堺市ブランド「ヨサノアキコ」

与謝野晶子にちなみ「ヨサノアキコ」と名付けられた桜は、平成30年に「日本花の会」に品種認定された。大仙公園内の晶子の歌碑の横にひっそりと植えられている。

2メートルほどの小さな木で毎年、ピンクの花を咲かせ、がくが濃い紅色をしており「情熱の歌人」といわれた晶子のイメージに合う。育成を手掛けた堺市大浜公園事務所の宮本博行さんによれば「ヨサノアキコ」はベルギーの育種家からの寄贈だという。

「堺市独自の桜が欲しかった。そこでベルギーの育種家さんに与謝野晶子という人物や堺市の事情を説明し、イメージに合った桜を作っていただいたんです」

堺市は「堺市ブランド桜」として、晶子ゆかりの地に無償配布している。晶子の歌碑や記念碑のある地が多く、東京都杉並区の「与謝野公園」や、京都府与謝野町の京都丹後鉄道・与謝野駅前にある。(田所龍一)

産経新聞

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