ごつごつした石が、道の両端のあちこちに置かれていた。大きさは30センチほどのものが多い。大阪府忠岡町役場の近くで、落石があるような場所ではない。いったいなんだろう。
大阪に赴任したばかりの4月。自分が知らないだけかと思い、役場で会った地元の記者に聞くと、「いけず石ですね」と教えてくれた。
石がなければ、お互いに……
「いけず」は関西地方で使われる言葉で「意地悪」を意味する。ただ、石は意地悪で置かれているわけではなく、狭い道に入ってくる車が家の壁などにぶつかるのを防ぐためだという。
確かに、その道の幅は3メートルほどと狭く、両脇には住宅が並んでいた。道沿いに住む藤原純行さん(83)に聞くと、1年ほど前に石の真上に位置するひさしの樋(とい)に、車の上部がぶつかる事故が起きたという。
自身は長く家を離れていたので石がいつからあるかはわからない。「トラックがぶつからないように置かれたんじゃないか」と話す。
近所に住む女性は「いけず石」との呼び方があることは知らなかったといい、「いけずではない」と強調した。やはり過去に何度か、車が自宅の屋根などにぶつかった。
数年前にも電気の引き込み線を車が引っかけたという。事故が起き、互いに嫌な思いをするのを避けたい思いがにじむ。
こうした石は、大阪市や堺市などでも狭い道が多い地域で見かける。地域性があるのだろうか。
日本海側は
大阪市立自然史博物館の中条武士学芸員は、2022年から全国各地の「いけず石」の分布を調べている。
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