大規模災害で交通網が寸断された際、自転車が重要な移動・輸送手段となる──。
1995年の阪神・淡路大震災の経験を原点に、堺市では自転車を活用した防災力の強化が地域ぐるみで進められている。
阪神大震災で約400台が「被災者の足」に
阪神・淡路大震災当時、道路の寸断や公共交通の停止により、移動手段の確保が深刻な課題となった。自転車部品製造が盛んな堺市からは、約400台の自転車が被災地へ送られ、安否確認や物資運搬などで「被災者の足」として活躍した。
その後、東日本大震災では阪神の教訓を生かし、パンクしにくいタイヤを装着した完成車を被災地へ届けるなど、支援の質も進化している。
車が入れない現場で力を発揮
自転車の可能性は、被災者支援にとどまらない。
2018年の西日本豪雨や2024年の能登半島地震では、土砂崩れや狭い道路のため、救助車両が現場に近づけないケースが相次いだ。
こうした経験を踏まえ、堺市は地元企業・森井製作所と連携し、「レスキューバイク」の開発を進めている。
三輪・電動で資機材と人を運ぶ
開発中のレスキューバイクは、
- 三輪構造で悪路でも安定走行
- 車両が入れない場所まで資機材を大量搬送
- 運転者に加え、最大2人の同乗が可能
- 電動アシスト付きで体力消耗を軽減
といった特徴を持つ。完成は今年度中を予定している。
堺市消防局は、レスキューバイクの導入により、移動や運搬の効率を高め、人命救助にマンパワーを集中させたいとしている。
「自転車のまち・堺」ならではの防災
中世から続く鉄加工や分業制の技術を背景に、自転車産業を発展させてきた堺市。現在も「サイクルシティ堺」を掲げ、自転車を生かしたまちづくりを進めている。
その蓄積が、災害時の現実的な対策として形になりつつある。
自転車は、日常の移動手段であると同時に、非常時の命綱でもある──堺発の取り組みは、他地域にとっても示唆に富む事例といえそうだ。





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